市場の規模では判断しない──アメリカ・中国に注力しない「Bebot」の海外展開戦略

vol.12

2018.11.29

「ガイドブックを超える体験」をコンセプトに、チャットボット(AIを活用した自動会話プログラム)を活用した外国人旅行者向けコンシェルジュサービス「Bebot(ビーボット)」の開発・運用を行っている株式会社ビースポーク。「Bebot」は、現在は4カ国で1日に3万5,000人もの旅行者に利用されている。

今回はX-HUBプログラム「米東海岸コース」の採択企業でもある同社代表の綱川明美氏に、どのように海外で事業を展開してきたのか、難しかったこととは何か、また海外展開を考えているスタートアップがアクセラレーションプログラムに参加する意義などを伺った。


ビースポークは2015年に創業されています。御社のサービス「Bebot」は最初から海外進出を考えていたのでしょうか?
私たちの会社はフランス、中国、ポーランド、アメリカ、マレーシア、イタリアなど多国籍なメンバーが集まっているので、そもそも「日本とそれ以外の国」という捉え方をしていません。起業した2015年は、私がたまたま日本にいて、しかも訪日観光客が増えてインバウンド需要が盛り上がり始めた頃でした。大きなマーケットもあったので、自然と日本からスタートしました。

当時日本では、外国人旅行者向けのチャットボットを提供している会社はいなかった。私たちが最初だったので、価格競争などに左右されること無く、適切な相場を自分たちで決めることが出来ました。

シンガポールは、国の観光局がホテルなどに対して助成金をたくさん出している国です。サービスを導入する際、ホテルの代わりに費用を70%負担してくれる助成金があるので、日本と同じ価格帯で販売することができています。

日本とシンガポール以外のマーケットでは、すでに市場相場があったということでしょうか。
そうです。私達のサービスはチャットボットに加えて、顧客データの収集や顧客単価を上げるお手伝い、利益率改善に繋がるカスタマイズなど、コンサルティングもセットになったパッケージで提供しています。

日本とシンガポール以外の国は、チャットボットを提供するだけのシンプルなサービスが一般的で、パッケージではないのでかなり安い。だから価格がボトルネックになり全然売れませんでした。今は、そういった国向けにシステムや売り方の改善を進めているところです。

綱川さんは頻繁に海外に行かれているとお聞きしましたが、会社における主な役割は何なのでしょうか?
開発以外は全て関わっています。最近一番取り組んでいるのは、自治体や空港などの大きい案件獲得です。

開発機能や優先順位も、全てプロダクトマネージャーと私で決めています。あとは、広報や採用、投資家対応ですね。今まではバックオフィスも担当していたのですが、最近総務を担当してくださる方が入社してくださって、人生が変わりました(笑)。日曜日の夜に経費精算や入社手続きなどやっていたので。

Bebotは今後、どのような海外展開の戦略を考えているのでしょうか。
ここ1年、仕事でいろいろな国に行って海外の大きな市場を目の当たりにしました。そして改めて、今一番伸びている市場はアジアだなと実感しています。

もちろんアジア以外の国に行ったときも、採用に繋がったり、Bebot導入のお問い合わせをいただいたりとメリットは多かったです。ですが、ビジネス文化の違いから仕事を進めるのに時間がかかってしまうこともあって。魅力的な市場はもっと近くにあることを再確認しました。

某企業から新しい技術責任者が入社してくれることになったので、技術サイドのロードマップを引き直した上で、一気に海外展開していこうと考えています。

アジアの市場が伸びているということですが、いま急激な成長をしている中国は特に大きなマーケットがありそうです。中国への進出も視野に入れているのでしょうか?
現段階では、注力する予定はありません。なぜなら、私達のサービスは母国語が英語と中国語以外の国との相性が良いと考えているからです。

例えば、日本で日本語のチャットボットを導入しようとしても、ハイエンドのホテルの場合は、フロントで対応できてしまうためあまり需要は見込めません。

一方で中国は、いまとても魅力的な市場に見えますが、「自動化」「多言語対応」という切り口では中国語のニーズはあまり無い印象です。英語についても、国籍問わず英語を話せる人は多いし、観光地に行けば英語のマップは必ずおいてある。高いコストをかけてわざわざ導入する必要があまりないんです。

ではなぜアメリカには進出しているのか。それは、開発やリサーチ、リクルーティングなど、サービスを作る拠点としてとても魅力的だからです。弊社のサービスの場合は、あくまでもその視点なので、サービスをアメリカ国内でグロースさせていくという考えはあまりありません。自社サービスの特性とマーケットの特性を見極めて展開していくことがとても重要なのだと思います。


すでに多くのクライアントを海外に持つビースポークですが、昨年X-HUBが主催する東海岸コースに参加されました。参加してみていかがでしたか?
X-HUBに参加して一番良かったのは、ボストンにあるVCGI(ベンチャー・カフェ・グローバル・インスティチュート)プレジデントのトラヴィス・シェリダンなど、素晴らしい人たちと出会えたこと。ドラヴィスとはいまも毎週チャットをしていて、頼んでいないのにうちの営業活動をしてくれてクライアントを紹介してくれることもあります(笑)。あとは、東京都主催のプログラムなので、クライアントと取引する際の信頼性の担保に繋がりました。

一方で、他で行われているプログラムも含め、アクセラレーションプログラムは企業主導で主催されることが多く、プログラム内容は全体最適化されているので企業毎のニーズにマッチしないこともあります。

もちろん、発表会を記事にしていただければ広報の役割を果たしてくれますし、賞金というカタチでサポートしていただけるものもある。私のように、素晴らしい出会いのきっかけになるというメリットもあります。特にまだ創設間もないスタートアップは、自社のフェーズとプログラムがマッチしていれば是非参加してみるといいかもしれません。