事業成長に必要な視点は「ショットガン」と「ライフル」── 日米に拠点を持つTrillium CEOが語る海外戦略

vol.14

2019.02.13

 

日本、そしてシリコンバレーを拠点に、サイバー攻撃から自動車を守るためのセキュリティソリューションを提供しているTrillium(トリリウム)。伝統的な企業が多い日本の自動車製造業界の中で異彩を放っている同社は、2018年にはシリーズA2ラウンドでの資金調達を発表し、総資金調達額も約1500万ドルとなった。 今回、TrilliumのCEOを務めるDavid M. Uze氏を独占インタビュー。積極的な海外展開を続ける同社のグローバル戦略の裏側、そして2018年に参加したX-HUBプログラムで得たものとは。


今年で2014年の創業から5周年を迎えます。改めて、御社がいま事業として行っていることをお聞かせください。
Trilliumでは、納車からスクラップ工場まで、全ての瞬間に利用者が安心して車に乗れるように、自動車向けのセキュリティソリューションを開発・提供しています。

設立当初は、サイバー攻撃から自動車を守るセキュリティプログラムを販売することでマネタイズをしていましたが、現在では独自の技術を使って記録した大量の車両データを、機械学習やマーケット分析に必要なデータ群として企業に提供することで、収益をあげている形です。 またEnd to Endでサービスを提供している点、そして特許を取得した高度な暗号化技術も、弊社の強みだと思っています。

Trilliumは日本人やアメリカ人を中心としたハイブリッド企業だと思うのですが、この組織構成がもたらした影響を教えてください。
現在のTrilliumの組織構成は、日本人が1/3、アメリカ人が1/3、残りの1/3がその他の国の出身者です。その中でも、『改善』や『自他共栄』といった日本由来の考え方は、組織全体に浸透していると考えています。

また同時に、シリコンバレー由来の、失敗を許容するメンタリティや、『不可能なものはない』というDNAを、社員が持ち合わせているのです。このようなハイブリッドな組織文化こそが、Trilliumの強みだと思っています。

現在の活動拠点は日本とアメリカと聞きました。
事業を成長させる過程では、ショットガン(散弾銃)のように広範囲に銃弾を打ち、ビジネスニーズを探る時期が必要です。しかしそれは最短でなければいけません。ターゲットを見つけたと同時にライフルに持ち換え、1箇所を集中的に攻める必要があるのです。

我々は現在、ライフルを構えている状態、つまり事業を一点集中で行う状態です。現在は短期的な勝算があると見込んだ日本、ミシガン、そしてシリコンバレーという市場で戦っています。

また、CFOを除く全てのCXOクラスのメンバーは、本社があるシリコンバレーに拠点を置いていますが、これは「革新的なSaaSプロバイダーになるためには、イノベーションが日々生まれている場所にいたほうが良い」と考えた結果です。

海外進出において成功の鍵となる要素はなんだとお考えですか。
Trilliumが新しい市場に進出する時の判断基準はただ一つ、『需要があるかどうか』です。需要があるのであれば、進出しない理由はありません。逆に、将来的な需要が見込めない土地に進出することは、まずないでしょう。「需要がないところに投資なし」といったところでしょうか。

加えて、課題を抱えるマーケットを探すことも重要だと考えています。我々は、エンジニアだけが喜ぶような、難解なプログラムを作っているわけではありません。多くの問題を抱えるマーケットで課題解決を実現することが、よりよい人間社会の構築に繋がると信じているのです。

したがって、Trilliumではカスタマーニーズがあるものだけを提供し続けます。もし顧客の需要がないものを作ったとしたら、もし顧客の課題を解決できないものを作ったとしたら、それは愚かな行為です。顧客を第一に考えて動ける企業こそが、成功に続く道を歩めるものだと信じています。

そのようなカスタマーニーズがある場所、つまり今後の進出先は、どこになるとお考えですか。
まだ具体的なアイディアはありませんが、シンガポールに代表される東南アジア市場には、大きなチャンスが転がっていると思っています。これは日本の金融機関が重点的に投資をしている様子からも分かります。

また、ヨーロッパも大きな市場であることに間違いありません。成熟したマーケット、安定した需要、GDPRのユースケースがある点からも大きな機会があると見込んでいます。そして中国は言わずもがなです。

勿論日本やシリコンバレーといった現在の拠点を見捨てるつもりはありません。ただ、日本では、日本人特有の性格ゆえビジネスに比較的時間がかかることも事実です。ポートフォリオのバランスを取る上でも、東南アジア、ヨーロッパ、そして中国市場に投資をしていくことは必要だと考えています。

2018年は種まきの期間だったので、2019年は芽が出たところに重点的に投資したいですね。

ヨーロッパといえば、Trilliumは2018年のX-HUBプログラム(ドイツ ベルリン・ミュンヘンコース)に参加しています。その理由を教えてください。
ドイツは、誰もが知っている『車の国』ですよね。また、EUマーケットに参入するためのスタート地点として、最適な場所と言えるでしょう。何より、自動運転のエコシステムを確立させるためには、同国での成功は必須です。ドイツのような成熟した市場での成功こそが、結果的に北米や日本のマーケットの転換も導いてくれると考えています。

X-HUBプログラムに参加したのは、そんなドイツ市場に参入する上で非常に大きな助けになるのでは、と考えたからです。

プログラムに参加してみてどうでしたか?そこで得られたもの、感じたことなどを教えてください。
実は社員の一人が来週からミュンヘンに行くのですが、そこでもX-HUBを通じて知り合った大手自動車メーカーとの商談を行う予定です。このように、X-HUBのネットワークを通じて様々なマッチメイキングの機会を得ることができました。既に保険会社や、通信企業との商談も行っています。我々のように既にプロダクトを持っている企業が新しい市場に進出する上で、大きな助けとなると感じました。

最後に、プログラムへの参加を検討している方に向けて一言おねがいします。
もしあなたの会社の製品やサービスが、革新的な技術として日本市場で認知されているのであれば、日本という枠組みを外してより大きなスケールで考えてみるのはいかがでしょうか。

日本の経営者は単に「よくわからない」という理由で海外市場を敬遠しがちですが、その点でX-HUBは、メイド・イン・ジャパン製品を世界中に送り出すための架け橋として、非常に素晴らしい機会を提供してくれます。もし日本のスタートアップが海外に進出したいと考えているのなら、X-HUBを利用しない手はありません。常に学び続ける姿勢が何よりも大事であることを改めて認識することもできたことも含め、とても良い機会でした。