インドネシア経済は通貨や政治の安定感から高い成長率をキープしています。またインドネシア経済は転換点でもあります。これから海外進出を検討する人に知っておいていただきたい経済成長率の推移と展望をまとめました。

インドネシアの近年の経済成長率推移

インドネシアはASEAN諸国の中でも安定した経済成長率を維持してきた国です。しかし、2019年10月に世界銀行、IMFが示した経済見通しにおいて、2019年のインドネシアの経済成長見通しを0.1ポイント引き下げて5.0%としました。

近年のインドネシアの経済成長率推移は2015年に4.8%まで下がったものの、ゆっくりと回復して2018年には5.2%に達しました。また世界銀行はシンガポールとブルネイを除くASEAN諸国の2019年の経済成長率についても、0.4ポイント引き下げて4.8%としています。

このことについては米中貿易摩擦の影響もあると指摘されています。インドネシアは中国との貿易も大きく、インドネシア大手財閥のリッポーグループが、中国最大のSNS「微信(Wechat)」を運営しているテンセントに出資するなど経済的なつながりもあります。

そのため景気不振には中国の不景気の影響もあるでしょう。現在東南アジア諸国では中国からの生産移転が進んでいます。しかし、東南アジアの拠点は相対的に規模が小さくて、インフラも十分ではありません。いまだ中国の代替国となるには課題が残されている状態です。

インドネシアに残された課題

インドネシアはASEAN諸国の中でも豊富な資源に恵まれた国です。そのため第一次産品の輸出が多く、天然ガスや原油といった資源価格の推移に、経済成長率も大きな影響を与えます。2011年からの2年は資源価格が高騰しており、投資も活況でした。また天然ゴムやパーム油といった植物資源も豊富にあり、天然ゴムは世界一のタイには及ばないものの、他を引き離して世界で2位の生産量を誇ります。またインドネシアはパーム油の世界最大の生産国および輸出国で、世界の半分以上を占めています。

消費市場が活発で生産国でもあるインドネシアは今後大きな発展が期待できる市場です。為替や政治が安定していることから個人消費、耐久消費財消費が大きいという特徴があり、人口増加と合わせて世界から有望視されています。しかし、インドネシアからの輸出は資源輸出への依存が強く、これからどのように加工輸出型の輸出に転換していくかが、今後の大きな課題になっています。

インドネシアのジョコ首相は、より多くのパーム原油を国内で加工したいという方針を明かしました。パーム油は石けんやチョコレートなどの加工原料として世界中で利用されています。ジョコ首相はパーム原油をジェット燃料や化粧品、石けんにすることを検討していると述べました。半加工品または加工品産業を増やし原料ではなく付加価値を高めていく意向です。インドネシアが加工に乗り出すということは現在流通しているパーム原油の量も減少する可能性があります。インドネシアはニッケル鉱を来年1月に禁輸する計画で、流通市場を揺るがしています。パーム原油を禁輸する話は出ていないものの、国内加工拡大見通しと輸出減少の可能性は世界を揺るがす可能性が高いでしょう。

輸出するか、国内で消費するかに問わず、インドネシアでの加工度を上げることは付加価値を高めると同時に、国内産業の経営や技術水準の向上、所得の増大、雇用機会の増大などに貢献します。付加価値を高めるためにもインドネシアに外資を呼び込む動きが活発化しています。

ジョコ首相が率いるインドネシア経済の行方

ジョコ首相が率いるインドネシア経済の行方
2019年4月に再選を果たしたジョコ首相はインドネシアのインフラに注力すると述べています。現在掲げている目標は2045年に世界トップ5の経済大国になるというもの。ジョコ首相は45年の先進国入りに向けて懸命に働かなければいけないと述べました。海外からの投資を伸ばすために、関連省庁の再編や新設をする見通しです。

ジョコ首相はこれで2期目の大統領となり、1期目に進めたインフラ整備も進める姿勢を示しています。3兆円規模の巨大プロジェクトで地方開発も加速する見通しです。現在インドネシアは首都ジャカルタに政治と経済が集中している状態です。その結果、首都と地方の所得格差が深刻化しています。

そこでジョコ首相は首都への集中化を緩和するために首都をボルネオ(カリマンタン)島東部に移す方針です。首都ジャカルタは慢性的に交通渋滞や地盤沈下があり、外資が投資しにくい環境でした。そこで一極集中を避けて、広範囲でのインフラ整備を進めます。

まとめ

インドネシアは高い水準で経済成長が推移している一方で、インフラ環境などの点で他国に見劣りする面がありました。ジョコ首相の政策は海外からの投資を呼び込んで地方開発も目指すものです。また手続きの簡略化など投資環境も改善する見通しです。インドネシアのインフラ整備には日本の企業も多く携わっており、今後もインドネシアと日本の協力関係は続くでしょう。

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