アジアの「シリコンバレー」と呼ばれ、現在世界中から注目を集める中国の深セン。同市はイノベーション先進都市として、最新技術をスピーディーに駆使する数々の世界的企業を生み出してきました。

深センには国内外の企業のほか、研究機関や大学も集積しており、ものづくりのエコシステムが醸成されています。「世界最大規模のものづくりの街」としての特徴や、ものづくりエコシステムの魅力をまとめました。

深センの都市の特徴

香港に隣接する深セン市は、北京市や上海市、そして広州市とならぶ中国本土の4大都市のひとつです。東京都とほぼ同じ広さの面積に、約1300万人の人々が暮らしています。

同市は1980年に中国初の経済特区として指定され、2020年までの約40年間で人口は約40倍に増加。市民の平均年齢は33代と非常に若く、労働年齢人口の比率は9割を超えます。

元々小さな漁村だった深セン市は、中国国内で「誰にでも平等にチャンスが与えられる都市」として、起業志向の強い様々な夢をもった若者を集めてきました。かつてはスマートフォンをはじめとしたIT機器の工場が集積していましたが、人件費の高騰に伴い、現在は世界でも有数のイノベーションの街へと変貌を遂げました。近年はハイテク産業や金融業などを中心に急速な経済成長を遂げ、世界中から注目を集めています。

深センに進出している、もしくは進出を検討している日系企業の数は2021年1月時点で400社ほどにのぼります。京セラがイノベーションセンターを開設したり、トヨタ自動車が中国のEV大手の比亜迪(BYD)と合弁会社を設立したりと、日本と深センの交流も活発です。

深センのものづくりエコシステムの3つの魅力

深センでは製造・ものづくりに関連する企業が多く集積しており、現地には魅力的なエコシステムが形成されています。ここでは、深センのものづくりエコシステムの3つの魅力をご紹介します。

1:ワンストップのものづくり体制

部品の調達から設計、そして試作や認証の取得まで、深センではワンストップでものづくりができるエコシステムが形成されています。市内を車で1時間走るだけで、部品を小ロットで調達できるサプライチェーンが確立されているため、低コストでスピードを意識して商品を製造できます。

また、深センから香港国際空港までは1時間以内の距離であるため、世界各地へスピード感をもって商品を輸送できる強みもあります。

2:”深センスピード”と呼ばれるスピード感

深センには効率や開発スピードを重視するスタートアップや企業が多く集積しており、プロダクトの企画から開発、そして販売までのスピードのはやさから「深センスピード」という単語も生まれました。市場へのプロダクト投入や事業展開のタイミングが少しでも遅れると、他社が類似品を作り競争に負けるという認識が強いため、スピード感を意識した開発ができる点も強みの一つです。

「まずは市場で検証してみる」というスタンスから、これまでに数々のプロダクトが誕生しています。

3:社会変革を担う、先端技術

深センにはロボットやウェアラブル端末、そして人工知能(AI)の分野で開発を手がける企業や研究機関が多く集まっています。金融とテクノロジーを組み合わせたフィンテックや、デジタル技術の力で変革を目指すDXなどに取り組む企業も多いのが特徴です。日本の企業の中にも、現地企業と合弁会社を設立し、先端技術開発に注力する動きも見られています。

深センや中国市場への事業展開で留意すべきこと

深センのものづくりエコシステムには、、海外展開を目指す日本企業やスタートアップ、及び研究機関にとっても魅力的な環境が整っています。そこで、深センや中国に進出する時に留意しておきたい、重要な2つのポイントをご紹介します。

中国の多様性を理解する

中国は14億人を超える人口を有し、労働人口も地域ごとに多種多様です。中国では同じ会社内でも、月収の差が10倍を超える社員が混在していることが一般的です。ブルーカラーやホワイトカラーの区別だけでなく、様々な層の労働人口がいることでサービスが成り立っているという側面を理解したうえで事業に臨みましょう。

徹底した市場リサーチを心がける

中国ではGoogleやFacebook等が使用できず、AlibabaやTencentといった独自のプラットフォームが発展するなど、市場には明確な特徴があります。そのため中国市場の徹底的な理解のほか、現地で勝てる商品力の強さや現地に精通したパートナー、そして社員の力が必須となります。

まとめ

深センではエコシステムを中心としてものづくりのDXが進み、新サービスや新商品の実証実験や社会への実装が街をあげて進んでいます。そうしたなかで、深センという都市の特徴やものづくりエコシステムの魅力をふまえ、スピード感をもって市場に飛び込むことができれば、日系企業やスタートアップも大きな成果を残せるでしょう。

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