スタートアップがヨーロッパ進出するメリットやデメリットには何があるのでしょうか。早い時期から多くのスタートアップを輩出しているのが、ヨーロッパで最大のスタートアップハブと呼ばれている「ロンドン」です。

ロンドンの充実したスタートアップ支援をはじめ、フランス・ドイツ・北欧といったヨーロッパでは多くの国でスタートアップ支援が行われています。世界中から注目を集めるヨーロッパの取り組みについて、チェックしておきたいスタートアップ支援情報やメリット、海外進出のデメリットを紹介します。

欧州最大のスタートアップハブ「ロンドン進出のメリット」

イギリスは、現在世界でもトップクラスのユニコーン企業輩出国として知られています。2019年にはテック企業へのベンチャーキャピタル年間投資額が欧州最大へと成長するなど市場規模が大きく拡大しました。

スタートアップや起業家をサポートする有名なアクセラレーターも存在し、日本企業などが海外進出する際にも適した国といえるでしょう。

スタートアップハブ「ロンドン」

ロンドンは、スタートアップが集まるヨーロッパでも最大のスタートアップハブです。公用語が英語で高い水準の教育機関が多数存在するロンドンでは、優秀な技術者を獲得しやすいメリットや、世界的な金融都市という特長からフィンテック(金融業と技術を合わせたサービス)分野を中心に多くのスタートアップが成長しています。

2010年にテックシティ構想「East London Tech City」が発表されてからのロンドンは、多くのスタートアップやインキュベーションスペースがOld Streetに集まるようになっていました。近年ではエコシステムの発展によって様々な優遇制度が設定されたことにより、スタートアップや海外の大企業が次々ロンドンへの進出を決めています。

日本からの進出

ロンドンのスタートアップの特長ともいえるフィンテックやメドテック、ヘルステック分野は日本でも注目されている分野です。日本が国を挙げて取り組んでいるスマートシティ分野においても、ロンドンでの先進的なサービスの開発や実証実験が期待を集めています。

また、イギリスではこのロンドン以外にもケンブリッジやオックスフォードなど多くの都市で日本からの進出がみられ、スタートアップへの投資額も増加しています。イギリスのスタートアップの増加・成長は、今後も続くことが予想されています。

欧州各国のスタートアップ支援事情・進出の「メリット」

ヨーロッパ各国のスタートアップには様々な特長があります。国によってスタートアップのメリットや行っている支援策が異なる場合もあるため、海外進出先を選ぶ際にはスタートアップの分野や規模に適した国を選ぶ必要があるでしょう。

フランスのSU支援

フランスのスタートアップにはモビリティー分野で成長する企業が多いという特長があります。フランスでは、2005年から行われている競争力拠点政策、さらに2013年に開始された「フレンチテック」などのスタートアップ支援でアジア系スタートアップなど多くのユニコーン企業を輩出、国内だけでなく海外からのスタートアップも誘致し、大きな成長につなげています。

フレンチテックとは、経費支給・滞在許可・受け入れ支援など、政府による様々なスタートアップ支援プログラムを指す言葉のことです。政府が積極的にスタートアップを支援する体制が構築されているといえるでしょう。

各都市にスタートアップエコシステムをつくることから始まり、2016年にはスタートアップの起業者・就労者とその家族の現地滞在を許可、生活等をサポートする「フレンチテック・ビザ」を発行して支援を行っています。

このビザが海外の優秀な人材を集めるきっかけの一つとなり、新しいビジネスを創造するスタートアップ企業が増加・成長し、国内の経済発展につながりました。政府の行っていた支援には現在では地方自治体に移ったものもあり、投資を目的とする世界的な大企業からの注目も集まっています。

ドイツのSU支援

ドイツでは連邦制のため州や特別市の権限が強く、国のほかに州や地域によるスタートアップ支援が行われています。ベルリン、ミュンヘン、デュッセルドルフなど各都市に地域ごとで異なるエコシステムが形成されているのが特長です。

2005年には政府系ベンチャー投資ファンドが設立されてスタートアップの資金調達がしやすくなり、近年では業界別にいくつも行われている多様なスタートアップコンペティションが、新しい開発・事業のアイデアを実現させています。

現在数多くのユニコーン企業を輩出し、ヨーロッパ最大級のスタートアップ都市として知られているのがドイツのベルリンです。ベルリンでは経済振興公社によるサポートも充実しているため、条件を満たしている場合には創業当初に毎月2,000ユーロの補助金が受けられます。

ベルリンのスタートアップは国外のベンチャーキャピタルからの注目も大きく、スタートアップ投資額総額39億ユーロと強力なスタートアップエコシステムが形成されています。スタートアップ向けに投資家マッチングイベント、起業家間の情報交換イベントなども開催されているため、スタートアップへの多角的な支援が期待できるでしょう。

各国から優秀なエンジニアなどの人材が集まっている国際性の高いベルリンではスタートアップの従業員にも外国人が多く、英語による業務が可能です。また、ベルリンは独創的なアイデアを持った中小企業のスタートアップが多いとされています。

対して南ドイツでは古くから生産・製造系の大規模な現地企業が発展していたため、地域の産業を発展させる技術に強い大学からのスピンアウトといったスタートアップが多くみられます。

北欧のSU支援

ノルウェーやスウェーデン、バルト三国などが含まれる北欧は、イノベーション最先端の地域とされています。起業に挑戦しやすい環境に恵まれ、世界的なユニコーン企業を多く輩出している地域といえるでしょう。

スウェーデンをはじめとする8ヵ国のことを指す北欧バルト地域は共通語として英語を使用し、東京圏と同じ人口規模で国内市場の規模が小さいことから、スタートアップの多くは進出先を海外に定めています。また北欧バルト地域の国々は世界的な福祉国家のため、リスクを恐れずに起業へ挑戦することが可能です。

こうして生まれたユニコーン企業が、北欧バルト地域でエンジェル投資家としてスタートアップを支援する流れにより、さらにスタートアップの成長が促進されているといえます。現在では海外投資家の参入も進み、よりスタートアップの支援が充実しているのです。

北欧バルト地域では、初等教育からアントレプレナーシップや創造性を伸ばす教育が実施され、自然に慣れ親しんだ環境への意識が高い人が多いことなどから、持続可能な発展を目指したスタートアップが生まれています。北欧のスウェーデンはフォーブスの「ビジネスに最適な国」で世界1位に選ばれている国でもあり、今後のスタートアップも世界から注目が集まるでしょう。

欧州を含む海外へ進出することの「デメリット」

ヨーロッパへ進出する場合のデメリットには、主にカントリーリスクや人材管理のリスクなどがあります。また、進出先の国によっても異なるリスクが発生する場合があるため、国の特徴、情勢などにも事前に確認をしてよく検討しなければなりません。

カントリーリスク

カントリーリスクには、国や地域で発生する政治や経済、自然災害などの変化のことです。現地の政治や経済に変化が生じると、ビジネスにも悪影響を及ぼすケースがあるため注意しなければなりません。

ロシアによるウクライナ侵攻に関連した対ロシアへの経済制裁による影響、新型コロナウイルスの感染拡大による影響といった大規模な情勢の変化はもちろん、言語や文化、商習慣の違いから問題が生じる場合もあるため、国ごとに異なる文化や商習慣は事前に把握しておく必要があります。

人材管理リスク

現地で人材を雇用する際にも、日本とは異なる点には注意して対策を取ることが重要です。海外では日本よりも転職が一般的で、人材の定着が難しい場合があります。

人材を定着させるために、雇用条件を精査してスキルアップや昇進などにコストをかける必要があるでしょう。社員を現地駐在させる場合にも、手当の支給などのコストがかかる点に気をつけなければなりません。

家賃や生活費のリスク

イギリスに進出を考えている場合、主にロンドンは家賃や食費などの物価が高く、生活費がかかりやすいというデメリットがあります。経済的に安定する前のスタートアップは経費を抑える必要があるため、スタートアップ向けの安く利用できるコワーキングスペースなどを活用すると、ある程度費用を抑えられます。

反対にドイツでは生活費が安いというメリットもあり、国や都市・地域によってもデメリットは異なります。支援策は様々あるので、リスクとともに対策も事前に調べて問題を解決できるようにしておきましょう。

まとめ

ヨーロッパでは多くの国がスタートアップ向けの支援を行っています。ロンドンやベルリンなどのスタートアップハブ、ユニコーン企業を多数輩出するフランスや北欧など、それぞれの国・エリアで成長しているスタートアップの分野や支援内容は異なります。

事前に情報を確認し目指すスタートアップに適した国を選んで挑戦すると、海外進出の大きな成功が期待できるでしょう。都内スタートアップの海外進出をサポートする「X-HUB TOKYO」では、海外展開に必要な樹夫法の発信だけでなく、実例を踏まえたアドバイスやサポートを提供する機械も設けています。

また、海外のエコシステムやグローバルオープンイノベーション、日本企業の事業創出をテーマとするイベントなども随時開催しています。最新のイベント情報をチェックして、海外展開に向けた一歩を踏み出してみましょう。

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hawaiiwater

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