福祉国家として知られているデンマーク。デンマークはオープンイノベーション大国でもあります。デンマークがどうやって高い幸福度を維持しているのか、その取り組みを事例で紹介します。

ハイレベルな福祉、教育国家としてのデンマーク

デンマークをはじめとする北欧諸国は社会保障が充実していること、高いレベルの教育によって育成された優秀な人材など、世界でも成熟した国家として知られています。それらの背景にあるのは政府の支援によるオープンイノベーションの活用でしょう。

デンマークはフォーブス誌によるビジネスに最適な国ランキングでも2018年に第7位に輝きました。これにはビジネスの設立がシンプルで、労働法の要件が柔軟であることも理由と考えられます。しかし、デンマークがビジネスの場として特異なのは相互協力的なビジネス慣習や、実証実験をおこなうための情報や手段が手に入りやすいことなども大きな理由として挙げられます。さらにデンマーク政府はスタートアップ企業の支援にも力を注いできました。

デンマークには現在1500社を超えるスタートアップ企業が本社を構えています。2017年のスタートアップエコシステムランキングではデンマークは202か国中で7位に位置しています。税制度で起業家を優遇していること、スタートアップの機会、技術の獲得、人材などの環境整備が進んでいることは世界から高く評価されています。

参考:日本貿易振興機構(JETRO)ロンドン事務所『2018 年度北欧におけるイノベーション実態調査』

LEGO社の事例から見るオープンイノベーションの取り組み

デンマークを代表する会社としてブロック玩具のLEGO社は有名です。日本でも愛好家が多いLEGOですが、もともとは木製玩具を製造しておりプラスチック製玩具を作り始めたのは1949年からです。

LEGO社の社名の由来は「Let Godt」、「よく遊べ」という意味。LEGO社もオープンイノベーションの力で新しいビジネスモデルを創出した企業のひとつです。LEGO社は1990年代に業績が悪化したことで、オープンイノベーションを導入しました。

LEGO社が変革を迫られたとき、徹底したのが自社の分析です。事業部署を分析してテストプロジェクトを実施することによって、秘められた能力やモチベーションを調べました。その結果わかったのはLEGOを生み出すのが必ずしもLEGO社内部の人間でなくてもよいということです。むしろ消費者の方が新しいクリエイティブなアイディアを抱えていると考えて、社外からの突飛なアイディアを募集するようになりました。

こうして生まれた「LEGO IDEAS」は、社外からのアイディアを募る場所、またファンとの交流、共創の場として機能しています。

LEGO社はとくに製品開発フェーズの初期段階でのユーザーの関与を重視しました。「LEGO IDEAS」では自分の考案した作品を共有(①Share Your Ideas)してから、ユーザーの投票(②Gather Support)がおこなわれます。1万人の票を獲得したアイディアはLEGO社のデザイナーなどから検討(③LEGO Review )され、製品化が合意されれば世界で販売(④New LEGO Product)されることになります。

これらの取り組みからLEGO社は大幅に業績を追い上げ、イギリスのブランドコンサルタント会社Brand Financeが実施した「世界で最も有力なブランド・ランキング」(2017年版)でも1位に輝いたのです。

Brand FinanceはLEGOに対して、世代を超えて多くの人を魅了していること、性別を意識したマーケティングをおこなうことも顧客ベースを広げる一因になっていると指摘しています。

デジタル国家としてのデンマーク

デジタル国家としてのデンマーク
デンマークは国としては小国で、小さい範囲に多くの要素が集積している国です。そのためビッグデータの集積が進み、デジタル化先進国でもあります。2018年にはデジタル化のフロントランナーになるという国家戦略も掲げ、デジタル化の推進によって国家としての成長を目指しています。

デンマークのデジタル化の特徴はそのスピード感にあります。デジタル化が社会インフラなど急速に浸透したため、さまざまな分野や活動が融合された社会が生まれました。政府や民間企業、研究機関などが密接につながった状態でイノベーションやソリューションに取り組むことができるのです。

社会を構成するアクターとして市民や企業、政府がデジタルでつながっています。その基盤となるのがスマートシティやオープンイノベーションなどの制度です。現在のデンマークはデジタル化の第一段階は終了して、環境負荷の少ないまちづくりを目指すスマートシティやデンマーク版マイナンバー、公共ビッグデータ、国民全体のヘルスケアデータが蓄積したバイオバンク、キャッシュレス社会を目指すフィンテックなどの環境が整いはじめています。

まとめ

デンマークは小国でありながらオープンイノベーションを自然と導入する基盤が整った国です。日本のベンチャー企業でもデンマークで現地企業と協力して開発を進める企業があります。近未来型の価値の創造、ソリューションの手段であるオープンイノベーションが根付いた国デンマークは、海外進出を目指す日本企業にとっても学ぶところが多い国家であるといえるでしょう。

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