失敗事例を参考に海外進出を成功させる

海外で製造、販売などを手掛けるにあたって、日本企業の多くが魅力を感じるのが市場の大きさや今後の成長性です。さらに、進出先で仕入から製造、販売までを行うにあたっては、原材料仕入のコストダウンを見込めます。

いずれの方法であっても、進出先がアジアやアフリカなどの新興国であれば、人件費を削減できる可能性も大きくなるでしょう。このように、海外進出にはメリットが多くあるため、大企業から中小企業までさまざまな企業が海外進出を目指しています。

しかし、多くの企業が海外進出に失敗し、メリットを享受できないまま撤退しているのも現実です。新興国への進出が多くなると、その地の言語や文化・法制度などに適応する必要が生じます。人材育成や翻訳コストなどがかかる場合もあるため、慎重なビジネスプランの検討も必要になるでしょう。

失敗による撤退を避けるためには、先人たちの残した失敗事例を元に、その要因を突き止めることが近道と言えます。失敗要因が分かれば、それに対する対策を講じることで、成功へとつながる可能性が高まるからです。海外進出で成功を収めたいのならば、まずは失敗要因を探り、リスクを1つずつクリアにしていきましょう。

海外進出失敗の「大きな3つの要因」


海外進出が失敗する要因はさまざまです。企業が失敗に陥る大きな3つの要因を紹介します。

失敗要因1:販売先の確保・販路拡大の失敗

海外進出で失敗するケースとして、販売が安定せず売上が見込めないため、赤字になることが挙げられます。海外では、日本でいくらシェアを持った大企業でも、一から販路を開拓していくことになります。そのため、販売先を思うように確保できなければ、成功できるはずがありません。

ところが、日本で成功を収めた後に海外進出した企業は、国内での成功体験から販売先の確保を軽んじていることがあります。海外市場では、現地企業を相手に外資系企業として戦うことになります。国によっては、政策的に外資系企業の参入がそもそも難しいケースもあり、日本製の高品質・高価格の商品を必要としないお国柄に出会うこともあるでしょう。進出先の市場について徹底的に調査し、参入できる可能性を慎重に判断することが必要です。

日本のビジネス習慣と海外のビジネス習慣は異なるため、日本のやり方では販路の開拓が難しいこともあります。そのため、進出先のビジネス習慣を理解し、日本との違いを把握することがポイントになってきます。進出計画を立てる際には、現地のマーケティングや販売プロセスを理解し、現地のビジネス環境に適応した戦略を構築するようにしてください。これにより、販路拡大や市場開拓の成功率を上げることができるでしょう。

また下請け企業にとっては、海外に進出した元請企業からの仕事が大きな収入源となるでしょう。しかし、海外に進出した元請けから依頼されて進出を決めたものの、元請企業が約束に反して仕事を回さなくなるケースもあります。この場合、請われて断りにくいという事情もあるかもしれませんが、自社独立で事業をやっていける見込みがないのに安易に進出を決めたことが問題となります。したがって、進出先の市場動向やビジネス環境を十分に調査し、自社の事業計画に照らし合わせた判断を行うことが必要です。

失敗要因2:労務・人材育成の問題

海外進出企業の中で問題点として重視されていることに、人材の確保と育成があります。実際、多くの企業がこの部分でつまずき、失敗する例が後を絶ちません。それは、海外での労務管理や育成方法が、日本とは大きく異なるためです。たとえば、働き方や考え方、その国の風土によって、人材の育成に直面する問題が異なってくるのです。

このため、海外の事業所運営においては、現地採用の人材に任せるなどの対策が必要になってきます。ただし、現地採用が成功するケースばかりとも限りません。事実、現地採用のトップが、企業の風土や理念をうまく継承できないケースも存在します。進出先の商習慣ややり方に圧されて、企業の良さを出せずに失敗してしまうこともあるのです。もし、現地企業と同じやり方をそっくりそのまま現地のやり方を踏襲するのであれば、進出する必要はありません。元からいた現地企業で十分なのです。

逆に、新しい市場でシェアを狙うには、より良いサービスや働き方を提供することが求められます。そのためには、その国をよく知る現地採用の人材と、企業理念を知る人たちが協力し、事業展開を行う必要があります。また、多様な文化や言語、環境などを考慮し、柔軟性を持って対応することが重要です。

失敗要因3:市場調査・競合情報の不足

海外進出においては、ライバルの情報を正しく把握することが重要です。また、リスクの目測を間違えることも失敗要因となり得ます。海外市場には、一見大きなチャンスがありますが、実際には多くのライバルたちとシェアを争う厳しい環境にあります。自社が目をつけた地域は、他社も目をつけているものです。

さらに、海外でのライバル企業は世界的な大企業である可能性があります。こうした状況を知らずに、市場の大きさばかりを見た楽観的な海外進出は、過去に数多くの企業が試みており、失敗するケースも少なくありません。

まずは、現地のマーケティング調査を実施し、競合企業の現在の進出状況やシェアの分布を正確に把握することが大切です。また、現地の文化や商習慣にも精通することが必要です。そうすることで、自社が海外市場で成功するための戦略を立てることができます。

海外進出失敗につながる「その他の要因」

この他にも失敗につながる要因があります。不適切な予算配分や、不十分なリソースの割り当ても、プロジェクトの失敗につながる可能性があるのです。

失敗要因4:財務・資金繰りの問題

海外進出においては、資金面の問題が生じることもあります。現地法人の設立費用や人件費、物流コストや市場調査費用など、海外進出には多額の費用がかかることが予想されます。そのため、事前に資金面を十分に考慮して準備を進めなければなりません。

ただし、資金面だけでなく、為替リスクや通貨制限など、財務面に関する問題も生じることがあります。これらの問題を回避するためには、事前に資金計画を立て、リスクを想定して対策を講じることが大切です。

失敗要因5:人的リソースの不足

現地採用スタッフや日本からの派遣スタッフなど、海外進出には多くの人材が必要です。そのため、人的リソースの不足が問題となることもあります。人的リソースを十分に確保できない場合、業務の遂行が困難になることがあるでしょう。

また、現地で従業員を雇用する場合には、彼らの文化や習慣を理解し、教育する必要もあります。そのため、現地の法律や規制に精通している人材の確保も必要になってくるでしょう。現地の従業員が自社のビジネス戦略を理解し、適切な方法で業務を進めていくためには、十分な教育とサポートが必要です。

加えて、現地の文化に合わせた制度や福利厚生の整備も考える必要があります。人材の採用や人材育成には、時間と労力に余裕をもって取り組みましょう。

失敗要因6:言語・文化の違い

言語や文化の違いが大きな問題となる場合もあります。たとえば、海外のビジネス環境では、英語や現地の言語が必要不可欠となることが想定されます。また、ビジネスマナーや礼儀作法・商習慣なども日本とは異なるため、これらの違いを把握し、現地の言語や文化に適応することが求められるでしょう。

現地の人々とのコミュニケーションを円滑に行うためにも、言語や文化に関する知識を深めることが必要です。

失敗要因7:地政学的リスク・カントリーリスクの見誤り

海外進出では、地政学的リスク・カントリーリスクを考慮する必要があります。政治的な不安定要素、治安や自然災害などのリスクを的確に把握し、適切な対策を講じることが求められるでしょう。また、日本とは異なる法制度や規制が存在する場合も多くあります。

これらを理解して、現地の法律や規則順守の徹底、リスクマネジメント計画の策定を行っていきましょう。汚職やコンプライアンス上の問題にも十分に注意するようにしてください。現地のコンサルタントや弁護士などの専門家のアドバイスを受けることも有効な方法です。

海外進出を成功へ導くための「6つの対策」

海外進出は失敗するケースも多いですが、成功している企業も存在します。海外進出に成功するための対策を分析することで、海外進出における成功の秘訣を探ることができるでしょう。

対策1:現地の市場に適した製品・サービスの提供

まずは、現地の市場に適した製品やサービスの提供を考えてみてください。現地の消費者が求めるものを理解して、自社の製品やサービスがどのような価値を提供できるかが重要なポイントです。

現地の消費者にとって魅力的で、需要を呼び起こせるような製品やサービスであれば、競合他社よりも市場で優位に立てるかもしれません。また、現地の文化や習慣に合わせることで、消費者に愛着や親近感を抱いてもらうことができます。

対策2:現地の文化・価値観に合わせたマーケティング

次に欠かせないのがマーケティング戦略、つまり消費者へのアプローチ方法です。マーケティング戦略は、ビジネスの成功に直結する重要な要素です。現地の文化や価値観に合わせたマーケティングを行うことを意識してください。

具体的なアピール方法としては、現地のイベントに参加することや、現地の有名人を起用する方法などがあります。自社の製品やサービスに親しみやすさを与えることによって、現地の消費者からの支持を得ることができ、自社のブランドイメージを向上にもつながります。さらに、現地の言語を使った広告やプロモーションを行うことで、製品やサービスの魅力を誤解なくターゲットへ伝えることができるでしょう。

ただし、文化や価値観は国や地域によって異なるため、現地のマーケティングについては十分なリサーチが必要になります。現地の消費者との信頼関係を築くことができれば、長期的なビジネス展開が可能になるため、現地の文化や価値観・好みを理解し、それに合わせたマーケティング戦略を展開していきましょう。

対策3:現地パートナーと協力関係の構築

3つめの対策は、現地のパートナーとの協力関係を築くことです。海外進出では、現地のパートナーと協力することで、現地の市場における情報やノウハウを得られるようになります。さらにパートナーが持つネットワークを活用することで、ビジネスチャンスを見つける可能性もあるでしょう。

また、現地パートナーとの協力関係を築いた後は、関係を深めることもポイントです。信頼関係が深まることで、お互いが相手に対してより協力的になり、コミュニケーションの質が向上します。関係を深める方法としては、現地パートナーと積極的にコミュニケーションを取ることや、現地パートナーに対してフォローアップを行うことが挙げられます。

対策4:現地の法律・規制に対する適切な対応

4つめの対策は、現地の法律や規制に適切に対応することです。現地の法律や規制に違反しないように、専門家のアドバイスを求めるようにしましょう。日本と同じ素材を使用しようとしても現地では許可されていなかったり、食品においては使用できない食品添加物を含んでいたりする可能性もあります。

現地の法律や規制に適切に対応することで、現地の消費者からの信頼を得ることにつながるでしょう。

対策5:現地のビジネス習慣について学ぶ

現地のビジネス習慣について学ぶことも欠かせません。日本の商習慣やルールを持ったままでいると、文化的な誤解が起こる可能性があるため、現地の文化や習慣を尊重し、理解することが必要です。

たとえば、ある国では名刺交換が重要なビジネスマナーである一方、別の国では名刺交換よりも握手やアイコンタクトを重視しているといった文化的な違いがあります。このような違いを理解し、現地の習慣に合わせたビジネスマナーを身につけるようにしてください。

現地のビジネス習慣に精通することで、ビジネスパートナーや顧客とのコミュニケーションが円滑になり、ビジネス上のトラブルを回避することができるでしょう。現地の人々とのコミュニケーションを大事に、無駄な誤解を避けるための細かな配慮を忘れないようにしてください。

対策6:現地の社会貢献活動への参加

最後に、海外進出する企業が現地の社会貢献活動へ参加することも大切なポイントです。現地のコミュニティに対する貢献は、企業の社会的責任を果たすことにつながります。また、現地の人々との交流を通じて、ビジネス展開において有益な情報を得ることもできるかもしれません。

具体的には、現地の教育支援や環境保護活動、地域社会のイベントやスポーツチームのスポンサーシップなどがあります。これらの活動に参加することで、現地の人々との信頼関係を築くことができ、企業のブランドイメージ向上にもつながります。

ただし、現地の文化や習慣を尊重し、適切な方法で活動するようにしてください。また、社会貢献活動がビジネスの妨げにならないように、バランスを取りながら進めていきましょう。

まとめ

海外進出のメリットを最大限に引き出して、成功を収めるためには、まずは失敗から学ぶことが大切です。他社の失敗要因を分析して、自社の海外進出に活かしましょう。

海外進出にはさまざまな課題が存在しますが、十分な準備と計画を立て、現地の環境に合わせたビジネス展開を行うことで、成功につながることが期待できます。

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hawaiiwater

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