年々、日系企業の海外進出は加速しています。今回は日系企業の海外進出の動向について調査しました。海外進出の動向から他の企業の動きや将来性が高い国を見定めましょう。

海外在留邦人調査統計よりわかること

外務省領事局政策課では、海外在留邦人数調査統計によって海外に進出している日系企業数を発表しています。海外在留邦人数調査統計によると、平成29年10月1日現在、海外に進出している日系企業数は、7万5,531拠点です。これは前年の3,711拠点(約5.2%)の増加となり、この統計をスタートした平成17年以降で最多の数字となっています。

その内訳としては海外に進出している日系企業のうち、現地法人化した日系企業は約48%で、現地法人化されていない日本企業が7.1%、区分不明のものが43%という結果になりました。割合としてはここ数年大きな変化はありませんが、平成25年以降現地法人企業は右肩上がりに増加を続けています。

海外進出している企業は過去5年間で約18%、11,032拠点増加しています。このように、調査結果からも日系企業の海外進出は右肩上がりに増加しており、多くの企業が海外拠点を構えていることがデータからもわかります。

エリア別日系企業海外進出動向

外務省領事局政策課の海外在留邦人数調査統計では各地域別のデータも公開しています。地域別にみると海外に進出している日系企業の約70%がアジアに集中しており、平成17年からずっと首位をキープし続けています。それに続くのが北米で12%、西欧で7.7%です。

国別でみていくと、中国に日系企業の約43%、32,349拠点が集中しています。次いでアメリカが約11%の8.606拠点で、これらの両国で日系企業の半分を占めます。3位以降はインドで約6.4%の4.805拠点、タイの5.2%の3,925拠点と続きます。その後のインドネシア、ベトナムというように東南アジアとのつながりが深いことが良くわかります。

前年比で見た時に日系企業はアフリカで約7.7%、中米で7.4%、アジア6.4%と全ての地域で日系企業が増加しています。特に近年において日系企業の躍進が目覚ましいのがメキシコです。メキシコでは、平成20年以降日系企業の数が大幅に増加し続けています。ついに国別の順位も台湾を抜いて11位となりました。また、前年比で見た時に飛躍的に増加しているのはタイの約120%増です。次ぐ韓国の36%増など、他国と比べても大きく増加しています。

躍進が進むタイ

躍進が進むタイ
2010年以降、安い労働力を求めて多くの製造業を中心にタイへの進出が進みました。しかし、近年になってタイの経済発展が目覚ましく、新たな消費市場として見直す向きが進んでいます。そのため日本食レストランなどの外食産業もタイに進出するようになりました。

タイ経済の中心はバンコクですが、チェンマイといったほかの地域も発展が広がっています。そのため潜在的なマーケットは今後も広がると考えられます。ただし、日系企業数が増加するとともに、日系企業間の競争も熾烈化しています。日本というブランドだけでなく、自社の戦略を打ち出した企業がこの競争を制すると考えられます。

消費市場としても拡大を続けるメキシコ

メキシコにも日系企業が次々と進出しています。平成20年度の調査ではメキシコに進出している日系企業は366社、しかし、平成29年度においては1182社となりました。ご存知の様にメキシコの首都はメキシコシティです。しかし、今増加しているのはバヒオ地域と呼ばれる中央高原エリア。ここにある大きな自動車工場が日産自動車のアグアスカリエンテス工場です。アグアスカリエンテス工場は日産自動車にとってメキシコで3番目の工場。日産自動車はメキシコの自動車生産の約2割を占めています。

メキシコについて中南米第2位の大国として知られています。一方でメキシコはOECD加盟国の中でも安い労働力を誇る国です。それが日本企業の進出とともに雇用が創出され、経済的にも安定しつつあります。その結果、経済的な中間層が増加して消費国としても存在感が増しました。また、メキシコは毎年1%人口が増加しています。生産人口の増加に伴って今後GDPの増加も予想されるでしょう。また、日本企業の増加に伴って、よりスキルアップして年収を増やすなど優秀な人材も生まれてきています。

まとめ

現在、国内のみの事業をおこなっている企業であっても新しく海外事業を展開したり、生産拠点を海外に移したりと多かれ少なかれ海外とのかかわりが増える可能性は高いでしょう。日系企業が海外に進出するといえば、安い労働力を求めるものというイメージは強いかもしれません。しかし、それらの国が経済的な安定を得ることで個人消費を目的とした日本企業の進出も相次いでいます。

海外に進出している日本企業の拠点数は過去最大となっています。日本は人口減少が進み、市場の縮小化が心配されています。海外においてどのような戦略を展開できるか、自社の強みや方向性を明確にできるが、企業の将来的な明暗を分けるカギとなるのかもしれません。

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hawaiiwater

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