日本企業でも、拠点や主要な取引を海外に移している企業は少なくありません。海外というビジネス先の重要性は、今後も増していくと考えられています。そこで、日本企業の海外事業動向について、アンケートをもとにまとめました。

日本貿易振興機構(JETRO)は、2018年11月~2019年1月にかけて10,004社を対象にアンケート調査を実施し、3,385社からの回答を得ています。2018年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(2019年3月)から、特に海外進出への取り組みについて抜粋して紹介します。

海外進出意欲の動向

まず、今後3年間の海外進出方針については、拡大を図る方針の企業が57.1%と前年から横ばいになりました。人材不足により拡大が難しいと回答した企業や海外需要に輸出で対応している指摘もありました。またインバウンド需要の増加によって国内事業への拡大意欲も前年と同水準を維持しています。

事業拡大先として有望視されている国

現在海外に拠点があり、今後さらに拡大を図ると回答した企業のうち、拡大を図る国や地域についても回答されています。最も多いのが中国という回答で55.4%を占めています。これは前年の49.4%よりも向上しました。また2位以降にベトナムの35.5%、タイの34.8%、アメリカの32.3%と続きます。

中国での事業拡大を図る国を業種別にみると、精密機器、繊維・織物/アパレルなど製造業を中心に事業拡大意欲が高まりました。また、アメリカでは、精密機器や医療品・化粧品などで意欲が高まっています。これらの二か国が海外進出先として安定して高水準なのは、市場規模の大きさのほか、日系企業を含む取引先のニーズに対応していると考えられます。また、中国はアジア圏でのビジネス展開の拠点として需要が高まっています。

近隣であるアジア圏に対する期待は高く、消費市場の成長の視野に入れている企業が多くあります。また現在は東南アジアで日本向けに生産しているが、現地販売を増やしたいとする意見も聞かれました。

アメリカに対しては、アメリカで成功することで世界的な展開を目指せるという影響力の大きさに関心を持つ声も挙がっています。企業が海外拠点をどこに置くかという選択は、世界的な視野での戦略がうかがえるポイントです。

海外進出意欲が高まっている業界は

海外進出意欲が高まっている業界は
アンケートによると、海外進出意欲が最も高まっている業種は医療品と化粧品です。これは前年に続き、1位をキープしています。この背景には日本製の化粧品に対する高いニーズが期待されること、また海外市場の今後の成長期待などが挙げられます。また、一般機械や電気機械など製造業でも、前年よりも進出意欲が増加しています。通信や情報、ソフトウェアなども進出意欲が高い業種です。

一方で、海外進出の拡大に対して意欲的でない業種としては金融や保険という結果でした。輸出や海外進出については手間がかかり人材の確保が課題となります。国内での需要開拓、新製品開発に注力していて海外事業拡大の人手が不足しているという声もありました。今後も海外生産拠点における人件費上昇や労働力の確保は課題となるでしょう。

各企業で戦略の違いが浮き彫りに

海外とのビジネスをしている企業は多いものの、そのすべてが海外拠点を持っているわけではありません。アンケートでも、今後とも海外への事業展開を考えていないという企業は、2014年度の15.7%から2018年度は23.2%に拡大しています。これには海外事業に従事する人材の不足や海外拠点をするための資金不足理由とする意見が多く集まりました。

加えて、多くの企業から聞かれたのが輸出で対応するという意見です。輸出拡大を目指しているため、海外進出は視野に入れていないという意見が聞かれました。国内にだけ基盤があるということはメリットでもあります。メイドインジャパンを強調した付加価値のある輸出をしている企業にとって、日本製であることは信頼性を保つためにも重要です。日本製でないと品質が保てないため、海外生産はできないという企業は少なくありません。

海外へのビジネスをスタートするには資金が必要ですが、費用を抑えて海外向けに製品を販売するのであれば、インターネットを介した方法もあります。費用対効果が高いビジネスモデルとしてインターネットでの事業はこれからも広がっていくでしょう。海外に拠点を持たない企業であっても、有望な市場として海外市場向けの戦略を構築しています。

まとめ

海外進出をこれから考えている企業の中には、現状の内需型産業中心の事業構造を変革したい、将来的な需要減退局面に備えたいという声が挙がりました。国内市場縮小への懸念は多くの業界から聞かれています。外需と内需それぞれの成長性が海外進出を決定づける方針となっています。また、拠点を増やすことでサービスや物流管理体制を拡充させることができます。海外でのさらなるシェア拡大、もしくは新しい地域への進出を目指すなど、海外進出してからの戦略にも注目が必要です。

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hawaiiwater

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