日本で企業を設立、運営するうえで必ず知っておかなければならないのが会社法です。会社法があるのは日本だけではありません。海外進出するうえで、必ずその国の会社法を調べておくことが必要です。海外の会社法についてまとめました。

会社法とは

会社法とは会社の設立や組織運営、会社の仕組みや資金調達などについて制定した法律です。

会社法の役割

日本で会社法が施行されたのは2007年のこと。それまでは商法や有限会社法などに分散されており単一の会社法はなく、会社に関係する法律の総称として会社法という言葉が使われてきました。

会社法の役割は、第一に取引相手や利害関係者の保護が挙げられます。会社の法律関係や事実関係を明確にして法人格を与えて情報を開示することで保護しています。また、株式会社を法律上で規定しているのも会社法です。

会社法で規定されていること

会社法では会社の設立についても規定しています。例えば、日本であれば以前は株式会社の設立にあたり1000万円の最低資本金が必要とされていましたが、現在は資本金の最低金額に定めはありません。

そのため、資本金が1円であっても会社を設立することができます。また、剰余金配当の扱いも会社法で規定される内容です。国別にどのような会社法の規定があるのか個別に紹介します。

海外進出の形態によって違う会社法の扱い

海外に進出するための形態としては、海外支社方式、現地法人方式と駐在員事務所方式があります。業種や海外での戦略によって適切な形態は違います。自社の戦略からどの形態のメリットが大きくなるか想定してみましょう。

海外支社方式

まずは海外支社方式から説明します。海外支社方式は、本社を日本において支社として海外に会社を建てる方式です。海外支社の損益は日本本社に合算されて日本で法人税を申告します。

国ごとで支社の設立が認められていないこともあるので現地の法律に従いましょう。海外支社の場合は、日本本社と同一法人となるため定款や社内規定をそのまま使えることが多く、創業時の事務やコストをカットすることもできます。また資金やり取りに融通が利くこともメリットです。

ただし、海外支社であっても、現地法人同様に現地の会社法に基づいて設立申請が必要な場合は、外資の出資比率の規定がある場合もあります。これは国内産業保護の目的もあって設けられた規制のひとつです。

現地法人方式

現地法人方式は、日本の会社とは別の独立した海外法人として現地に子会社を設立する方法です。独立した法人ではありますが、外資の出資比率に制限がある国の場合、業種などが限定されることも。現地の税率で申告、納税することになるため、安い税率の国に海外法人を作ることで法人税を圧縮することもできます。また、現地法人とすることで現地法において独自の賃金や雇用体制を構築でき、最低賃金が日本よりも低い国ではコスト削減が可能になるケースもあります。

現地法人とすることで定款や登記も必要になります。そのため、手続きや事務作業が増える可能性も。ただし、IT先進国として知られるエストニアのように設立登記が1時間足らずで完了する国もあります。他にも外資系企業を誘致するため設立登記を簡単にしている国も増加しています。

・合弁会社方式

現地法人方式には、現地にパートナーを作って共同出資で現地法人を設立する合弁会社方式もあります。現地のノウハウを利用しながら利益の配当を受けられる方式です。外資系企業に認められていない土地の所有やライセンスなどを受けられることもあります。

駐在員事務所方式

海外進出形態の候補として挙げられる駐在員事務所は、現地での法人設立や支店開設の前に市場調査や情報収集を目的として設置されます。
そのため登記自体が不要であることも多く、他の形態に比べ手続きが簡単であることから、経費などのリスクが少ないというメリットがあります。ただし、あくまでも調査や宣伝の拠点であるため、営業活動を行うことはできません。

中国の会社法


中国での会社設立にはさまざまな制限があります。まず、中国においては会社名にも厳格なルールがあります。会社の規模によっては、現地法人の会社名に地域名や業種が盛り込まれていることが条件です。そのため新しく名付けが必要になるケースがあります。会社名は工商行政管理局の承認を受けて、経営範囲も商務委員会の承認が必要です。

資本金についても中国では扱いが違います。もともと中国では、いわゆる有限責任会社の設立に対し最低資本金を3万元と定めていましたが、2014年の会社法改正により原則撤廃されました。

ただし、外国企業が1元から会社設立が出来るかというとそうではありません。あまりに資本金が少ない場合は提出官庁に断られたり、銀行で口座が開設できなかったりという不都合が起きる可能性もあります。

実質的に必要な資本金は業種や業態によって異なり、認可が下りるかどうか行政指導によるところが大きいのが現状です。また、日本と違って設立前に資本金を支払っておく必要ありません。定款によって分割払いなどもできます。

参考サイト:JETRO(日本貿易振興機構)「外資に関する規制」

欧州会社法

EU加盟国で仕事をする際には、欧州会社法についても知っておく必要があります。欧州会社法とは2001年に採択・2004年より施行された法律です。同じEU加盟国であっても会社法の内容には大きな違いがあり、EUで広く活躍する企業は多数の規制に服することになります。

そこで欧州会社(Societas Europaea (SE))の設立や運営について定めたのが欧州会社法です。欧州会社であれば、設立や登記等の手続きについて、各国固有の会社法の制限を受けることがありません。EU間の移動も可能であるため、EU全域で事業展開をすることができます。

参考サイト:外務省「欧州会社の概要」

アメリカの会社法

アメリカは州ごとに会社法を制定しているのが特徴です。進出する州によって必要書類や手続きが異なりますので、とくに注意が必要です。

設立した州だけでしか営業活動が行えないのかというと、そうではありません。「州外法人」の営業許可を取得することで、他の州でも営業活動を行うことができるので安心してください。

法人設立の際には、事業を行う州で設立するのが一般的です。複数の州で活動する予定がある場合には、税制面や法律面から登記を行う州を選択するという考えもあります。

ただし、税務申告は設立した州と実際にビジネスを行う州でそれぞれ必要となるため、登記だけ異なる州で行うのは手間が増えることになるので注意しましょう。

会社設立にあたり法制度の優位性などから人気の州もありますが、近年はどの州でも制度の見直しを進めています。さらに実際には多くの州が模範会社法を参考にしており、設立にあたっての条件は共通性が高くなっています。

まとめ

会社法によって日本で会社を設立するのと、海外法人を設立するのでは大きな違いがあります。その国の会社法を知るとともに、それに合わせた海外進出の戦略が必要です。海外進出の際には現地の慣習や会社法に通じたコーディネーターへの依頼をおすすめします。

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