企業会計において、受取配当金は法人税の計算に関わります。受取配当金の扱いは国内で受けるものと海外から受けるものとで扱いは異なるのでしょうか。外国法人からの受取配当金の扱いについてまとめました。

配当金と受取配当金

株式投資で得られる利益は、「売却益」「配当金」「株主優待」の三つです。そのうちの一つである配当金と受取配当金について解説します。

配当金とは

株式投資の配当金とは、主に株主や出資者に分配される金銭的な利益のことを指します。株主や出資者は、株式の保有割合や出資額に応じて、企業の利益の一部を受け取ることができます。配当金は株主や出資者にとって重要な収益源であり、配当金を受け取ることで自身の投資に対するリターンを評価し、リスクのバランスを判断することもできます。

配当金には現金の他に、金銭以外の財産を配当する「現物配当」があります。金銭以外のものとされていますが、実際には株式を配当することがほとんどです。現物配当は100%子会社が所有する資産を子会社から親会社へ移転させる場合に用いられます。

剰余金の配当については、株主総会の決議を経ておこなわれます。通常、配当金の支払いは年に1回の本決算、または中間決算も含めた年に2回です。ただし、企業の財務状況や業績によって変動するため、配当のない無配という企業もあります。

配当金の支払いには、企業の利益の一部が割り当てられます。利益を全額配当すると、設備投資や成長事業のための資金が残らず、企業の成長や株主の利益に繋がりません。配当金の大小は企業の信用力や株価にも影響を与える場合があります。

受取配当金とは

受取配当金とは、企業が事業活動の中で所有する「他法人の株式から受け取る配当金」に使用する勘定科目です。受け取った配当金は本業の収益ではないため、損益計算書上では「営業外収益」に分けられます。

受取配当金の勘定科目には、他法人からの余剰金の配当のほか、「信用金庫および信用組合等からの剰余金の分配」「株式投資信託における収益の配当」「保険会社からの基金利息」などが該当します。受取配当金は、受取利息と合わせて「受取利息配当金」という勘定科目で処理することもあります。ただし、自己株式からの配当金は、利益には計上できませんので注意してください。

剰余金の配当は、配当に関連する株主総会の決議日に計上します。一定の条件を満たしている株式会社は、株主総会の決議ではなく、取締役会の決議によって剰余金の配当をおこなうことが可能です。配当金は法人税が控除された利益から支払われるため、法人税が二重で課税されることを避ける制度があります。

受取配当等の益金不算入制度とは

受取配当金等の益金不算入制度は、企業が受け取った配当などを法人税の課税対象となる「利益」に算入しない制度です。企業会計上では、受取配当金は営業外収益に計上され、「利益」として取り扱われます。一方で、法人税の計算においては、必要な手続きをおこなうことで「益金」に算入しなくてもよいとされています。益金不算入になることで所得が少なくなり、法人税も減少します。これが「受取配当等の益金不算入制度」です。

この制度は、すでに税金を支払った後の利益から支払われる配当金に対し、二重課税を防ぐために設けられています。受取配当等を益金不算入できる金額は、持株比率に応じて受取配当金の全額から20%までと定められています。さらに受取配当金以外に、投資信託の収益分配金などにも適用されます。

上記の益金不算入制度は、国内法人による配当に対して適用されます。外国法人の場合、子会社か子会社ではない外国法人かによって扱いが異なります。まず、外国子会社以外の外国法人からの配当について紹介します。

外国子会社以外の外国法人から受け取った配当金は、原則として「全額が益金」として算入されます。つまり、外国子会社以外の外国法人から受け取った配当金は利益となり、法人税の課税対象となります。

外国子会社配当益金不算入とは

外国子会社とは

外国子会社とは、次の2つの要件を満たすこととされています。一つ目は「該当する内国法人の出資比率が25%以上」であること、二つ目は「保有期間が6か月以上」の外国法人です。

ただし、この出資比率は外国法人が属している国との租税条約で異なる比率が定められている場合があります。つまり、どこの国に子会社を作ったかによって子会社の扱いが全く異なるということです。日本と異なる比率が定められている場合はその国の比率によって判断されるため、必ず租税条約を確認しましょう。

租税条約の二重課税排除条項により、株式等の保有割合が軽減されている代表的な国としては、アメリカやブラジル、オーストラリア、カザフスタンは10%の保有、フランスの場合は15%の保有で子会社として認められます。つまり、益金不算入にできる配当金の範囲も広がるということです。

外国子会社からの配当金不算入制度

外国子会社からの配当の益金不算入制度では、外国子会社からの受取配当金は企業会計上、「利益」として扱います。税制上は、その配当額の95%相当は益金に算入されないという扱いです。益金不算入の割合が95%であるため、逆に言えば5%は課税されることになります。つまり、1,000万円の配当金が支払われた場合、50万円が課税されます。

この制度は平成21年度税制改正により導入された制度であり、特定の外国子会社から受け取る配当金を益金不算入とするものです。この制度を適用するためには、確定申告書の「外国子会社から受ける配当等の益金不算入等に関する明細書」に、益金の額に算入されない配当などの額およびその計算に関する明細を記載します。また、必要な書類を保存しておく必要があります。

参考サイト:
国税庁 別表八 「受取配当等の益金不算入に関する明細書」

従来制度からの変更点

「外国子会社からの配当の益金不算入制度」が創設される以前は、外国子会社からの受取配当金を「益金」として扱っていました。しかし、そもそも配当とはすでに法人税後の剰余金を分配するものです。そのため外国子会社からの配当金を益金に算入してしまうと、外国と日本での法人税が二重に課税されてしまうことになります。このような重複した課税をなくすために、間接外国税額控除という制度が利用されていました。

これは外国で課された法人税のうち、配当金にかかる部分を日本での法人税から控除する仕組みになっています。言い換えるなら、外国での法人税を日本での法人税の前払いとみなす制度です。

海外からの収入は受取配当金に限りません。運用益や不動産収入、国外の著作権などの収入がある場合、その国で税金が差し引かれます。また、日本にいれば海外での収入も日本の所得とみなされ、二重で課税されてしまいます。そこで、二重に課税されないために生まれた仕組みが「外国税額控除」なのです。

上記の外国税額控除の場合、外国子会社からの配当については日本の法人税率で計算されます。一方、外国子会社配当益金不算入の場合は、外国の法人税率による課税で完結するという変更になりました。

適用対象とならない配当金

外国子会社からの配当の益金不算入制度が適用対象とならない配当金もあります。

損金に算入する場合

配当金の全部もしくは一部が、その国の法令において所得の計算上「損金」に算入する場合には、外国子会社からの配当の益金不算入制度が適用されません。つまり、外国子会社の配当金の額が損金算入された場合は、日本において「益金」として扱われます。

みなし配当の場合

外国子会社が自己株式取得を予定している株式も、外国子会社からの配当の益金不算入制度は適用されません。たとえば、上場している外国子会社が自己株式を公開買い付けしている期間中に日本法人が追加取得した場合、これに該当します。この場合、公開買い付けによってみなし配当が生じますが、このみなし配当については益金算入されます。

※みなし配当とは、法人税法第24条1項で定められている制度です。法人税法23条に規定される余剰金の配当や分配等とは異なりますが、実際には余剰金の配当に該当し、法人税法上では配当金とみなされます。

まとめ

外国子会社配当益金不算入制度は、日本の企業が海外で得る利益を海外ではなく国内に還元する目的で生まれました。外国の収入はその種類によって扱いが全く違います。海外進出する企業が増える中で、当然海外での収入も増えています。税金制度を知らないままにすると余計に税金を支払ってしまう可能性がありますこともあるでしょう。不安な場合は税務署などにあらかじめ相談しておくことをオススメします。

著者情報

hawaiiwater

X-HUB TOKYO
Webマガジン編集部

企業の海外進出に関する
様々な情報を発信しています。