日本企業が海外進出を考える際には、国内で事業を行うのとは異なる注意点があります。日本国内では思いもよらないリスクも踏まえて、慎重な計画や実行が必要です。

資金計画面の注意点

日本企業が海外進出を考える場合、最初に検討をすべきことは資金面の計画です。海外進出においては、莫大な資金が必要となることが多く、失敗は許されません。

そのため、あらかじめ投資資金の回収計画を綿密に検討することが必要となります。とくに留意したいのは、各国の人件費や、その上昇率などです。

現地で従業員を確保することで人件費を抑えることができると一般的には考えられてきましたが、新興国の人件費の上昇によってそれも難しいことがあります。計画段階でも人件費の高騰は想定リスクとして考え、対策を講じておくことが必要です。

また為替変動リスクも資金計画のなかで考えたい問題です。成約時のレートでは利益が出ていたのに、その後レートの変動によって出荷時には差損が出てしまうこともあります。例えば輸出入の取引を行う際には、為替レートの変動によって為替差損の出ないような為替予約契約を結ぶことが一つの対策です。

人材確保における注意点

海外進出を考えるにあたっては、人材確保も重要な論点となります。日本からの従業員派遣や、現地での人材確保など、あらかじめ様々な選択肢の検討を行うことが必要です。

日本からの人員派遣の際は、現地での生活や安全などへの不安を感じないための配慮が大切です。とくに新興国への派遣には、さまざまな危険や不便への不安が伴いやすくなります。事前の出張などを活かして、現地での生活を想像し、安全性や生活慣習を知ってもらうことも大切です。

現地での人材の確保においては、その後の育成から労務管理まで、労働への意識や働き方などの違いも理解した上で、円滑に進められる方法を見出さなければいけません。

それでも最終的に人材確保が難航する場合、人材補強と組織強化など、構造の見直しを行います。

市場性に関する注意点


海外進出においての市場調査は、より慎重に行う必要があります。また、国内での調査よりも市場調査が難しくなることが多くあります。

現地との物理的な距離があるため、インターネットを活用しての予備調査も行うことになるでしょう。しかし、ネット上の情報には信ぴょう性の低いものもあるため、真偽を問いながら調査を進めることが必要です。

現地市場に沿ったSWOT分析などを行い、現状での採算性、将来予測や事業の計画に活かします。場合によっては、基本戦略の見直し、市場・製品の見直しや仕入・販売チャネルの再構築も必要となります。そのため、資金計画や採算性において、根本から海外進出を考え直すことも必要となるでしょう。

また、各国で違う物流事情などにも目を向ける必要があります。輸送の安全性やコスト、期間などが違うことで、原材料の調達から商品販売までの過程でスピード感を欠いたり、その結果販売チャンスを逃したりする恐れも考えられます。

その他・カントリーリスク

海外では、現地特有の情勢があります。テロや革命・戦争などの政治的な問題をはじめ、犯罪・病気など、個々の企業単位では対処できないリスクもあります。

こうしたリスクを防ぐためには、海外進出を検討する際に政治的安定度などで国を選ぶことも必要になってきます。コストや利益の差が小さい場合には、小さな差に囚われず安全性を重視しましょう。また、リスク分散の方法として、複数国への展開を考えることもできます。

国の違いによる注意点には、法律上の問題もあります。海外ではそれぞれの国において法制度や規則が違うものです。最初に注意すべきは、実際にその国で事業を始められるかどうかです。

また、100%外資の企業の参入が不可能な国もあります。外資規制はどうなっているのか、理解した上で進出を考えることが大切です。規制によっては、現地企業との合弁という選択肢も検討が必要です。

商習慣の違いも想定外の資金繰りの悪化を引き起こすことがあります。国ごとの商習慣の傾向を知り、経営状況を悪化させない回収方法で契約を結ぶことが大切です。

例えば、前金での取引が可能なのか、売掛金での取引なのか、さらに売掛金の回収方法まで含めて十分に検討しましょう。

軌道に乗った後の注意点も

海外進出では、事業がスタートして軌道に乗った後も注意点があります。これは国内においても同じですが、海外でも常に経営環境は変化しており、その変化を踏まえて、適切な市場と事業戦略の見直しが必要です。

国内で決裁を行う人も、過去の成功事例に囚われることなく、現地のリアルな状況を冷静に見定め、柔軟に対応しなければいけません。海外では国内で事業を行うよりも早いスピードでの対応が求められることも多くなります。

まとめ

上記のように多くの確認点がありますが、重ねて注意したいのは、人件費の高騰による利益率の減少についてです。製造業に限らず、安価な労働力を求めて海外進出した場合には、状況を冷静に判断し、時には大きな決断も必要になります。採算の合わない事業は、事業構造自体を大きく変えるか、撤退、他の拠点へのシフトも視野に検討したいところです。

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hawaiiwater

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