海外進出によって世界中に取引先を持つ企業が増加しています。国内市場が縮小することを見据えて、外国法人の設立に目を向ける事業主も増加傾向です。輸出での売上は消費税の扱いが違うため、還付を受けられるケースがあることをよく知っておきましょう。

消費税の仕組み

法人にはさまざまな税金が課されます。その中でも特に面倒事が多いのが消費税です。国内取引では、消費税7.8%(国税)と地方消費税2.2%、あわせて10%の消費税が課税されます。消費税は企業や利益の規模にかかわらず必ず納めなければいけません。まずは消費税の仕組みから説明します。

事業者が納税する間接税

消費税とは消費に対して課される税金です。そのため、消費税を負担するのはサービスやモノを買った消費者です。しかし、消費税を国に直接納めるのは煩雑で、申告漏れの心配もあります。そこで、消費税を納入するのは消費者ではなく、サービスやモノを提供している事業主としているのです。このような納税義務者と負担者が違う税金のことを間接税と呼びます。

事業者はサービスやモノの代金と一緒に消費税を受け取ります。その後、受け取った消費税を事業主が国に納付する仕組みです。加えて企業は、事業に必要なものを購入する消費者の立場になることもあります。その場合は、経費として消費税を支払うことになります。つまり、消費税の納税額は売上で受け取る消費税から経費で支払った消費税を引いた金額となるのです。

消費税が課税対象となる要件

国内で消費税が課税されるのは、以下の要件を全て満たす取引が対象です。この4つを全て満たす取引の売上を課税売上といい、この課税売上に対して消費税が課税されます。

  • 国内において行う取引(国内取引)であること
  • 事業者が事業として行うものであること
  • 対価を得て行うものであること
  • 資産の譲渡、資産の貸付、役務の提供であること

この他に外国貨物の引き取りも課税対象となります。消費税の課税対象となった場合には、その取引が非課税取引なのか、課税取引であるのか、免税が適用されるのかと、分類することができます。

なお資産の譲渡であっても、寄付や贈与などは対価を得ないものなので課税対象にはなりません。

外国法人の場合

外国法人であっても、消費税の納税義務は内国法人と同様です。法人税とは異なり、日本国内に事務所や支店などの拠点(恒久的施設)を有するかどうかは、消費税には関係ありません。原則として、基準期間にまたは特定期間の売上高が1,000万円超の場合に納税義務が生じます。

消費税の還付とは

消費税の還付は、「課税売上に係る消費税額」よりも「課税仕入等に係る消費税額から計算した仕入控除税額」の方が大きくなる場合に受けられます。課税事業者は、課税売上や課税仕入によって発生する消費税から納付税額を計算し、期限内に消費税の確定申告と納税を行います。

納付税額とは、「課税売上に係る消費税額」から「課税仕入等に係る消費税額」を差し引いた金額のことです。この額はおおよそ、受け取った消費税と支払った消費税の差額と考えることができます。

還付を受けられるケース

消費税還付を受けられるのは、売上で受け取った消費税よりも経費で支払った消費税の方が多い場合です。例えば、売上が奮わずに赤字になった場合、もしくは工場の建設など多額の設備投資で経費が大きくなった場合などが挙げられます。

建物や工場の建設、また工作機械の購入などをした場合、多額の投資が必要です。そのため会社の1年の売上を超えてしまうこともあるでしょう。また、消費税が還付されるケースは、赤字や設備投資以外にもあります。それがこれから紹介する輸出売上がある場合です。

還付金の申告時期

消費税の還付は、消費税の確定申告を行うことで受けられます。事業者は、その課税期間終了の日の翌日から2か月以内(個人事業者は翌年の3月31日まで)に消費税の確定申告書と「消費税の還付申告に関する明細書」を税務署長に提出することにより、消費税の還付を受けることができます。

ただし還付を受けることができるのは、課税事業者または課税事業者となることを選択した事業者に限られるため、免税事業者は消費税の還付を受けることはできません。

また、簡易課税制度(仕入額を売上額の一定割合とみなし、預かった消費税から支払った消費税を控除出来る制度)を選択した場合についても、支払った消費税額は「みなし仕入れ率」によって決まることから消費税の還付を受けることはできません。

輸出取引の消費税還付とは

輸出売上の消費税還付とは

輸出免税

国内での売上は消費税の課税対象になりますが、海外への輸出売上は消費税の対象になりません。免税となる理由は、消費税は日本国内で消費される商品やサービスに対して課税され、外国で消費されるものには課税をしないという考え方に基づくものです。これを輸出免税といいます。

払いすぎた消費税が還付される

一方、国内で経費が掛かっている場合は、経費として消費税を支払います。そのため支払った消費税が多くなり、消費税額の還付を受けることができるのです。

例を挙げて説明しましょう。ある会社で1億円の売上があり、経費が1,000万円である場合、輸出で売り上げた場合は受け取る消費税はゼロとなります。一方で経費として支払った消費税80万円となるため、80万円の還付金を受け取ることになります。

国内で売り上げた場合は経費の消費税が80万円に対し、売上として受け取った消費税が800万円となるため、差引720万円を納税しなければいけません。同じ売り上げであっても海外進出して輸出とすることで扱いが変わります。ただし、消費税の還付が受けられない企業もあります。それは簡易課税で計算している会社や免税事業者です。

消費税の還付を受けられないケース ①簡易課税を選択している場合

消費税の還付を受けられないケースとして考えられるのが、簡易課税の場合です。簡易課税とは、一定の売上規模以下の会社において、消費税を簡便に計算できる制度です。中小事業者の事務的負担を軽減するために設けられた、消費税申告の計算方法の一つです。

簡易課税の場合は売上の数字だけで消費税の計算をするため、経費で支払った消費税は集計されません。その結果、還付される金額も計算ができないので輸出売上の還付を受けられません。

簡易課税は「消費税簡易課税制度選択不適用届書」を提出することで適用を取り下げられます。ただし、一旦簡易課税を選択すると2年間は戻すことができないので注意が必要です。外国法人との取引を考えている場合は、簡易課税の適用は慎重に検討してからにしましょう。また、今後輸出売上が増える見込みがある場合は、早い段階で簡易課税を取り下げておくといいでしょう。

消費税の還付を受けられないケース ②免税事業者の場合

消費税免税事業者は消費税の支払いが免除されている事業者のことを言います。ごく小規模の事象や起業したての企業では免税事業者として消費税の支払いが免除されることがあります。免税事業者は消費税を納めていないので、還付を受ける権利もありません。

免税事業者は「消費税課税事業者選択届出書」を提出することで、税金を支払う義務が生じると同時に還付を受ける権利も生まれます。どちらが得なのかどうかは実際にシミュレーションして検討してください。スタートアップで、輸出売上がある場合などは消費税の還付を受けた方が得になるケースも多いです。どちらの方がより利益があるか、将来的にどうしていきたいかを専門家に相談してから決めるようにおすすめします。

まとめ

消費税が還付になることで利益となりますが、消費税の還付に際しては別途書類の提出が必要です。これは、「消費税の還付申告に関する明細書」のほか、輸出許可通知書などの輸出売上を証明する書類、また関連する仕入れの書類などが必要となることもあります。消費税の還付をスムーズに受け取るためにも、書類は必ず整理して提出できるようにしておきましょう。

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