海外進出に限らず、事業を行う上でスキームは重要な意味を持ちます。事業は長期的かつ永続的な視点でおこなうためにもより広い枠組みが必要です。海外展開のスキームについて紹介します。

スキームとは

最近になって、「スキーム」という言葉を頻繁に聞くようになったという人もいるかもしれません。もともとスキームとは「枠組みを伴った計画」を意味する言葉です。同じような意味でプランやフレームといった言葉が使われることもあります。

スキームは仕組みを表現する言葉としても使われます。イギリスでは、スキームに対して公共計画や案という意味があり、日本で使われているスキームもこれが語源と考えられます。ただし、アメリカ英語では陰謀というような意味で使うこともあるため、注意が必要です。

たとえばフランチャイズビジネスは、加盟店となることでノウハウを提供してもらう一方で、売り上げの一部をロイヤリティーとして支払うビジネススキームです。

海外展開のスキームとは

海外事業のスキームはさまざまな形があります。たとえば、100%の単独出資によって海外法人を設立するケースもあるでしょう。また、合弁会社を設立するケースもあります。この時に重要なのが、海外展開する相手国内で合法的かつ可能なスキームを選択することです。

「外資規制」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。国によって選択できるスキームが違います。そのため、どのスキームであれば収益を上げやすく、長期にわたって事業を継続できるかという点がポイントとなります。

事業スキームとしてもっとも問題があるのは、収益性の確保が十分にできないことです。収益性の確保を維持するには、スキームに数字を当てはめてシミュレーションするようにおすすめします。また、事業をこれから発展させるためには、柔軟性も重要です。

複雑なスキームは不確定な要素も多く、他の事業への転用が難しいケースもあります。事業の収益性に合わせて、どの事業にも適用させやすいスキームが必要です。ただし、確実な収益が見込める場合などは、手間と時間をかけてクロスバリューを展開するなど、複雑なスキームが最適なこともあります。

クロスバリューとは

単独資本による海外進出はシンプルでリスクも限定されています。しかし、外資規制や現地での収益確保のために100%資本の海外進出が難しいパターンも。そういった場合に用いられるのが「クロスバリュー」と呼ばれる複数企業で事業をおこなう形態です。

たとえば日本のメーカーが海外での事業展開を目指した場合、現地企業との合弁企業を設立する方法があります。日本企業は製品の製造技術やノウハウを提供して、現地企業では現地工場の運営に関するノウハウやマネジメントを提供します。このような場合、現地の法律を元にして出資割合やコストなどを勘案し、それぞれの資本比率を調整することとなります。製造合弁を日本企業51%、現地企業49%で設置、販売合弁会社を日本企業49%、現地企業51%で設立するといった方法もあるでしょう。

上記のように、二社間であっても複数の合弁会社を設立する複雑な事業スキームが用いられることもあり、さらに3社以上で業務提携することもあります。これらの事業スキームは、シミュレーションを元にして条件を決定してから、契約書や新しい企業の定款に落とし込みます。こうした契約は内容自体が複雑で、日本とは違う法律や商慣習のもとで契約交渉が難航することも。海外進出にノウハウを持つコンサルタントを利用することも検討してください。

外資規制とは

外資規制とは
国によって外資企業への規制は違います。外資規制とは、外国人や外国企業が国内企業に投資する際の規制です。たとえばタイの出資規制では、過半数の株主がタイ人であることが条件となります。そのため、タイ現地にパートナーがいないとタイでビジネスをすること自体が不可になり、タイ進出自体が困難になってしまうのです。

また、外国企業の土地所有の可否も国によって違います。外国人や外国企業が購入できる土地や不動産の面積が制限されている国もあるので、大規模な工場の建設などを考えている場合は注意が必要です。フィリピンのように、複数の店舗を展開する場合は出資規制の対象となる国もあります。そのような場合は事業をフランチャイズ形態にして、収益を獲得するスキームを利用することも考えましょう。

支配権によって事業の機動性やマネジメントの一貫性などの課題が生じるケースもあります。そういった場合は、共同出資会社を現地パートナーと設立したマネジメント会社の下におくといった方法もあるでしょう。実際の運営をどのようにおこなうかによって適した方法も変わります。

まとめ

海外展開のスキームにはいろいろなものがあります。日本本社に利益を直接還元するスキームもありますが、進出先の国の規制などによっては選べるスキームが限られてしまうかもしれません。

選択したスキームによって、事業展開やこれから想定されるリスクも違います。一つのスキームに縛られるのではなく、取りうる手段をそれぞれシミュレーションしてみましょう。

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