インターネットの発達によってイノベーションや新しいビジネスモデルの構築も次々に進んでいます。海外展開するスタートアップ企業に向けた支援や動向を紹介します。

第4次ベンチャーブームで日本が変わる?

近年、ベンチャー企業の資金調達が活発となり第4次ベンチャーブームが到来したと言われています。金融緩和や相次いで設立された官製ファンドの影響によって、ベンチャー市場へ資金が流れるようになりました。この市場拡大に拍車をかけたのは大企業からの投資資金です。

2018年、国内でもっとも多くの資金を調達したのはバイオスタートアップのペプチスターで、その額は200億円です。さらに2位のJapanTaxiも123億円を調達しています。

ベンチャー界では、評価額が1000億円以上の未公開企業を幻の生き物である一角獣になぞらえて「ユニコーン企業」と呼んでいます。しかし、日本人はそもそも起業意欲が低いとも言われています。もともと新卒一括採用や終身雇用が一般的だったこともあり、日本では人材の流動化がなかなか進みません。キャリアパスの一つとして起業を考える人もあまり多くはないのが現状です。

国はこれから2023年までにユニコーン企業の輩出を成長戦略として掲げています。また急成長する企業が増加する中で生まれた政府の取り組みが「J-Startup」です。

J-Startupとは?

J-Startupとは2018年6月に立ち上がった経済産業省の取り組みのこと。約1万社あるともいわれる昨今のスタートアップ企業の中から92社を厳選して、世界でも通用する競争力を付けられるようにサポートしています。

J-Startupでは厳選したスタートアップ企業を官民共同で支援します。具体的には海外展開のフォローや各種補助金等の支援施策における優遇などです。その背後には大企業やアクセラレーターなどの力もあります。

今までもベンチャー企業に対するサポート制度はありました。しかし、今までのサポート制度は条件さえ満たせば補助が受けられるなど、公平なものがほとんど。しかしJ-Startupでは92社と限定して、サポートしています。このことに対して世耕弘成・経済産業相は「えこひいきをして、世界で勝てるユニコーンを育てる」と語っています。

そこまでしてユニコーン企業を国が育てようとするのには理由があります。米調査会社のCBインサイツの報告では、日本のユニコーン企業数は2019年1月時点では1社のみです。これはメルカリが上場を果たしたことでユニコーン企業ではなくなったことも影響しています。

これは世界的に見ると圧倒的に少ない数字といえます。たとえば同調査では、最もユニコーン企業が多い国はアメリカであると報告されています。ユニコーン企業数は151社で、全体の48.7%です。次いで中国のユニコーン企業数は82社。26.5%に上ります。アメリカと中国で全体の7割を占めているのがユニコーン企業の現状なのです。

ユニコーン企業の数によって今後の国のテクノロジーや経済成長を占うこともできるため、日本の将来性に期待するとともに、世界への投資意欲も高まっています。

グローバル展開するために必要なこと

グローバル展開するために必要なこと
インターネットやIOTの発達によって、海外展開するための手間と時間は大幅に圧縮されました。その結果、海外展開をスタートするにもスピーディーさが求められるようになっています。多くの企業が国内での成功を足掛かりにして、海外展開に向けた市場調査やマーケティングをスタートします。しかし、スピーディーな経営が求められる時代において現地調査が必ずしも必要とは限りません。

市場選定の段階では、現地に行かずともインターネットから収集できる情報で判断できます。たとえば市場のポテンシャルや現地での動向などから、総合的に収益に結びつけられるかどうかを判断するのです。

また、フットワークの軽さもスタートアップ企業の強みです。とくに海外展開の場合は、撤退の判断が遅れれば遅れるだけ費用が膨れ上がります。そこで3ヵ月や6ヵ月というように、期間を区切って判断するなど、速やかな決断も必要となります。

そのほか、海外展開の初期段階では海外法人を作らないという選択肢もあります。現地でスタッフやインターン生を募集して事業をスタートすることも可能なためです。ものやサービスが現地で受け入れられるためには、地道な仮説検証が必要です。しかし、日本人向けの商品をそのまま海外展開しても受け入れられる可能性は低いでしょう。文化や経済状況が違えば当然新しい施策が必要です。

スタートアップ企業だからできることの一つが、既存の自社製品やブランドにこだわらずに、新しい商品を作るための労をいとわないことではないでしょうか。海外展開が難しい理由の一つとしてコストが挙げられますが、事業の手段を選択することで解決できる可能性もあると考えられます。

まとめ

大企業からスタートアップ企業への投資が増大しています。大企業ではできない領域やスピード感は大きな強みです。自社が新しい事業で海外展開するだけではなく、スタートアップ企業との連携も視野に入れることで、事業の選択肢は大きく広がるはずです。

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hawaiiwater

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