海外進出する企業は後を絶ちません。海外展開することによってチャンスも増える半面、それによってかかるリスクも発生します。どのような必要性があって海外展開するのかをよく考える必要があります。

海外展開の必要性

新興国が経済成長を進める一方で、日本は人口が減少するとともに国内産業は飽和傾向に向かっています。日本では少子高齢化が叫ばれるとともに、若い世代ほど消費をしない傾向が強まっているのが現状です。人口動態は急激な変化が生じにくいため、国内の需要は縮小が続くと予想されます。

一方で、東南アジアは人口が増え続けている地域も多く、経済的な伸びしろも十分にあります。事実、東南アジアと日本の最低賃金の推移を比較した場合、東南アジアは劇的な伸び率を示しています。

日本との最低賃金格差が50倍以上あったベトナムも急激に差が縮まり、2022年までに10倍程度まで縮まるとも予想されています。将来を見越してこれからの伸びしろがある地域をターゲットとすることで、日本の製品やサービスの販路拡大も可能かもしれません。

多くの企業が海外進出の必要性を認識するとともに、海外の日系現地法人数も増加しています。これまでも大企業とつながりを持つ中小企業が大企業とともに海外進出するケースが多く見られました。しかし、近年はビジネスの選択肢として海外展開を目指す企業が増加しています。

また、コスト面で海外展開を目指す企業も多くあります。たとえばより人件費が安い国で事業をおこなうことで人件費を削減できます。また日本よりも税率が低い国に海外進出することで節税することも可能です。

外資優遇制度を敷く地域は多く、税制面の優遇を武器に外資企業を誘致しています。コストを減らすことで生産コストを下げることで国際的な競争力をつけることにもつながるでしょう。

国内事業にとどまるという危険性

国内事業にとどまるという危険性
世界的に成功した企業を見ると必ずしも、世界的な競争に勝利しているわけではありません。むしろ多くの企業が他にはない発想や技術力を武器にしてモノやサービスを提供することで、代替がない存在に成長しています。スタートアップ大国であるアメリカでも、大きなマーケットを舞台にするより、ニッチなマーケットでニーズを掘り起こしている企業が成長拡大を続けています。

グローバルであれば、ニッチなマーケットでも市場規模は広く、成長性も十分に期待できます。逆に日本で大きなマーケットを狙うのは厳しい道になるかもしれません。国内の大きな市場はすでに大企業の競争が激化しているためです。

多くの企業が狙う大きなマーケットは、中国などの外資に参入される可能性も高く、価格競争に巻き込まれてしまいます。せっかく高い技術力で開発を進めても、他国からより安価なものを販売されて撤退を余儀なくされる可能性もあるでしょう。

国内事業にとどまったとしても、同じ事業を続けていて安定した利益が出続けるとは限りません。国内だけに集中するということはリスクでもあることを認識しておきましょう。

海外展開をおこなわない理由

企業の中には海外展開の重要性を認識しながらも海外展開をしていない企業もあります。その理由を尋ねたアンケートでもっとも多かった回答は「国内業務が手一杯で考えられない」ことで、次は「国際業務の知識・情報・ノウハウがない」というものでした。次いで「現地パートナー、商社などが確保できない」、「輸出先、現地販売先、訪日外国人を確保できない」となっています。

上記の結果からわかることは、海外展開の必要性を認識しながらも、多くの企業が情報やノウハウ不足で海外進出できない状況にあるということです。そのほか、輸出における課題として「現地パートナー企業・商社等の確保」がもっとも多い回答でした。

海外展開をおこなうためには、現地の法制度や商慣習に通じた現地パートナーや、現地営業所をサポートするための人材が必要だと考えられます。規模が小さい企業はとくに現地パートナーや十分な人材の確保が難しくなるでしょう。ただし、これらの問題を抱えていても海外展開をおこなって高い収益を上げている企業があります。

海外展開で高収益を上げている企業と、低収益にとどまる企業を比較すると、海外投資前後に実施した取組の中で「海外展開投資の目的・ビジョンの明示」、「海外展開の計画の策定」などの項目で、高収益を上げている企業の方が実施した割合が大きくなっています。

海外展開を目指す企業は人材の確保や育成をおこないつつ、収益獲得に向けた実効性のある計画を立てることが重要といえるでしょう。

参考:帝国データバンク
平成27年度中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査

まとめ

海外進出は費用もコストもかかります。そのため強く必要性が認識されないと踏み切れないかもしれません。海外進出するときには海外展開の目的や必要性を明確化して綿密な計画を立てるようにしましょう。また海外展開を考える場合は、専門家やノウハウを持つコンサルタントの力を借りることも検討するようおすすめします。

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hawaiiwater

X-HUB TOKYO
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