アメリカ進出には、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょう。アメリカは世界最大の経済大国であり、その経済力の高さから多くの日本企業が進出に乗り出している、海外進出先の一つです。

GDPが高く市場の規模が大きいとされるアメリカには、日本での起業よりも大きなビジネスチャンスが期待できます。アメリカ進出を検討している場合には、事前にメリットやデメリットをしっかり把握しておきましょう。

世界経済の中心である「アメリカ」とは

アメリカは世界経済の中心として、その経済力や海外進出企業の実績、スタートアップ企業の数などから、多くの企業から進出先として選ばれている国です。

世界1位のGDP・購買力

アメリカは、広大な国土に約3億3,000万人の人口を擁しています。2020年度のGDPでもアメリカが世界1位、国民一人当たりのGDPや個人消費も世界のトップレベルを維持する「経済大国」です。

アメリカのGDPは、個人消費がGDPの約7割を占めています。さらに新型コロナウイルス感染拡大前には、食料品や家電・自動車などのモノに対する消費に対し、外食や旅行・映画などのサービス対する消費の割合が大きいという特徴がありました。いまだコロナ禍前の水準には戻っていないものの、巨大なマーケットであるアメリカ進出は、企業の経済活動においても大きな数字につながりやすいでしょう。

また日本との関係では、アメリカから日本への輸出・輸入はどちらも4位、日本からみた場合には輸出が1位・輸入が2位と、お互いに貿易取引の盛んな国の一つでもあります。

日本企業では製造業が多く進出

アメリカに海外進出している日本企業は、2020年には6,700社を超えています。なかでも多い業種が自動車・自動車部品・金属工作機械などの製造業で、進出企業のうちの3分の1以上を占めています。

その他には、日本メーカーの製品を販売する自動車部品卸・電気機器卸などの卸業種、ソフトウエア開発やAI開発など、最新の技術に関連するサービス業が多く進出している傾向がみられます。

世界一のスタートアップ数

2019年の段階で、世界中のスタートアップ企業のうち約59%がアメリカに存在しているとされています。アメリカでスタートアップ企業が多い理由には、起業家を支援するエンジェル投資家やベンチャーキャピタルの存在があります。

1946年のニューイングランドにおいて、アメリカ経済繁栄のために大企業だけでなくスタートアップ企業も支援しようと、世界で初めてのベンチャーキャピタル「ARD(American Research & Development)が設立されました。

これにより、スタートアップ企業に莫大な投資家の資金を投資する仕組みが確立されました。ARDは1957年にコンピューター企業DEC(Digital Equipment Corporation)への投資を大成功させ、その後のベンチャーキャピタルブームの広がりに影響を与えています。

さらにベンチャー企業やスタートアップ企業に対するアメリカ政府の支援や、制度に関する法改正の実施により、ベンチャーキャピタル市場も大きく拡大しています。

アメリカ進出の「理由・メリット」


アメリカ進出には、巨大な市場への算出、中小企業やスモールビジネスへの支援、会社設立がしやすいなどのメリットがあります。アメリカ進出のメリットについても確認していきましょう。

メリット1・巨大な市場

世界最大規模の市場を誇るアメリカに進出して企業の認知度が向上すると、アメリカ企業として世界的な影響力を持つ可能性があります。実力主義のアメリカでの基盤を確立することで、ビジネスのクオリティが保証されるなど、ビジネス上では大きなメリットとなるでしょう。

アメリカでは人口の増加や経済成長が続いているため、企業が市場に参入したあとにも市場の拡大が期待できます。

メリット2・スモールビジネスへの支援

一人ひとりの「起業意識が低い」とされている日本とは異なり、アメリカでは起業家に対する支援、また起業しやすい環境が整っています。アメリカは実力主義社会のため、ビジネスの結果次第で周囲からの支援が得られ、起業には年齢や性別なども関係ありません。

また異なる背景や言語、習慣を持つ人々が暮らす多民族国家として、トラブルを防ぐためにさまざまな事柄に関して契約書を作成する特徴があります。このようなアメリカで成功するには、製品やサービスなどが優れていなければなりません。

確実な契約を交わしてビジネスを成立させ、市場において製品やサービスが認められた場合には、スモールビジネスでもアメリカ進出による成長が期待できます。起業においてビジネスプランが認められると、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から投資が受けやすいメリットもあります。

アメリカでは社会保険制度がそれほど充実していないこともあり、多くの人が本業以外にも副業としてビジネスを立ち上げています。こうした背景からも、スモールビジネスは社会的に注目が集まっているといえるでしょう。

メリット3・比較的簡単な会社設立

アメリカへの進出は、現地法人や日本企業の支店、駐在員事務所、GEO(Global Employment Outsourcing)の設立などで行うことが可能です。外国人でも貿易ビザや投資家ビザを取得すると現地で会社を設立することができ、多くの企業が現地法人の方法を選んで比較的簡単に会社を設立しています。

アメリカで会社を設立する場合には、多くの州で最低資本金の規定がありません。そのため、アメリカの現地法人は比較的低い資金での設立が可能で、取締役が一人でも設立することができます。

事業の種類によっては、多くの控除と減税措置が受けられるため、税金面でもアメリカ進出にはメリットがあります。

アメリカ進出の「デメリット」

アメリカに進出する際には、デメリットにも注意しなければなりません。日本とは異なる地域に進出するため、ビジネスに影響する法制度やコスト面などは、事前にしっかり確認する必要があります。

デメリット1・法制度・規制が州ごとに異なる

アメリカは50の州が存在する連邦国家のため、州一つ一つは独立した国と同じです。各州が自治権を持ち独自の法律を定めて行政が執行されていることから、同じアメリカへの進出とはいっても州の選び方で法人税も異なるため、注意しなければなりません。

州によって、税金の優遇制度や会社の設立手順といった、海外進出企業に関係する制度も異なります。州の特徴や経済状況なども事前によく確認し、想定しているビジネス展開に適したところを選ばなければ進出は難しいでしょう。

デメリット2・海外進出にかかるコスト

アメリカへの海外進出では、現地で人材を雇用する際にかかる人件費や、人材育成のコストに注意が必要です。日本よりも人材が流動的なアメリカでは、良い人材を確保するために従業員の給与などの条件を高く設定する必要があります。

良い人材を定着させるための人材管理にもコストがかかるでしょう。現地に駐在員を置く場合にはその生活をサポートする費用も必要で、アジアや欧州よりも高いコストがかかります。

また、日本よりも訴訟が多いアメリカでは、訴訟リスクにも注意しなければなりません。企業が訴訟によって高額な賠償金を負わされるリスクを避けるためには、事前に充分な調査を行う必要があります。

訴訟のリスクを避けるための法規制の調査、市場の需要・競合の分析などを行うための市場調査、現地視察などにコストがかかります。

まとめ

アメリカは、世界最大の経済大国です。人口も増加を続けていることから、今後もその経済成長が期待できます。日本との関係も深く、アメリカの巨大市場は大きなリターンが期待できることもあり、海外進出先として適した国といえるでしょう。

ただしアメリカは連邦国家のため、各州でその法制度や税金などが異なる点には注意が必要です。事前に適切な調査や準備を行い、海外進出の成功率を上げましょう。

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