日本での市場拡大が難しいと考えて、多くの企業で海外進出を検討している企業は少なくありません。では、経済大国アメリカはどの程度の規模を持っているのでしょうか。アメリカの個人消費の動向をまとめました。

経済大国アメリカと消費

誰もが知っている経済大国アメリカ。GDPは世界トップを誇ります。名目GDPはおよそ20兆ドルに達して、世界経済の25%を占めています。アメリカはリーマンショック直後の大不況からもいち早く立ち上がり、2009年からは緩やかな経済成長を続けてきました。

この堅調に推移するアメリカ経済を支えているのが、豊富な個人消費です。アメリカは人口約4億人で、GDPの7割を個人消費が占めている消費大国です。2019年4-6月期の実質GDP成長率も設備投資や住宅投資が弱含みとなりながらも、個人消費が堅調に伸びることで下支えしました。

世界経済の鈍化や米中貿易摩擦など世界経済は多くのリスク要因を抱えています。輸出主導の経済は世界経済が鈍化すればその影響が大きくなってしまうでしょう。たとえば日本は輸出依存型の経済で為替や世界景気の影響を受けやすい経済構造です。少子高齢化の影響もあり、飛躍的な消費拡大を目指すことも難しい社会構造です。

一方で、中国は人口を武器にして安価な労働力を活用することで海外企業を誘致して世界の工場に成長しました。現在も都市化によって中産階級を増やすことで安定した内需を武器に成長を続けています。

アメリカの個人消費は、世界全体のGDPの約17%を占めており、世界不況からの脱却をけん引したのも個人消費の伸びでした。アメリカは消費者信用が普及していて、2000年以降はクレジットカードやローンなどの利用増加が個人消費の伸びを後押ししました。

サブプライムローン問題を経て、信用収縮リスクが意識されることは増えたものの、もともとがクレジットカード社会なので、多くの人が日常の買い物をクレジットカードでおこなっています。オンラインショッピングを利用する人も増加して、さらにキャッシュレス化が進展しています。

個人消費を支える企業の移り変わりと戦略

個人消費というとまずはじめにスーパーや百貨店などの小売店をイメージするかもしれません。多種多様な製品を安く販売しているウォルマートはアメリカを代表する小売店です。2002年西友がウォルマートの傘下に入ったことは大きなニュースとなりました。スタッフの作業を減らさず大量単品陳列や新しい什器などのウォルマートのノウハウを導入することで、消費者向けの戦略も大きく変わりました。

アメリカには他にもドラッグストアやホームセンターなど大規模なチェーン小売業者が乱立しています。しかし、アメリカの消費市場では大きな変革が起きています。それはオンラインショッピングの拡大です。

オンラインショッピングの普及を促進したアマゾンの存在でしょう。アマゾンは1994年に創業、書籍のネット通販からスタートしました。現在ではCDやDVDのほか、食品などの日用品から大型家電まで幅広い取り扱いをしています。

アマゾンが支持されるようになった理由としては、従来のオンラインショッピングよりも配送が早く、しかも価格帯も小売店よりも低いことが挙げられます。

それに対してウォルマートなどの小売大手は、ネット通販大手と手を組むなど急速にオンライン化を進めています。アマゾンは医薬品販売にも参入して国民の生活には不可欠な存在に成長しました。小売店各社もアマゾンの一人勝ちに対して対策を急いでいます。

アメリカのEC市場規模と世界戦略

アメリカのEC市場規模と世界戦略
オンラインショッピングのようにコンピュータのネットワークによる取引のことをEC取引と呼び、世界的にもEC市場が拡大してきています。アメリカのEC市場は右肩上がりに増加していて、EC市場調査会社のeMarketerは、2016年の米国のEC販売額を3,849億9,000万ドルと試算しています。さらに、EC取引額は右肩上がりに推移して、2019年には5,349億5,000万ドルとなる予測を発表しました。

さらに、アメリカの2015年におけるサービス部門の売上額は、前年比5%増の約7兆ドル、そのうちECを通じた売上額は、前年比6%増の2,628億ドルでした。オンライントラベル会社社のプライスライン(Priceline)やエクスペディア(Expedia)にけん引されるように、旅行産業のオンライン可も進んでいます。

参考:日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューヨーク事務所
米国における電子商取引市場調査

また、EC市場が小売全体に占める割合も順調に増加してきました。とくに電化製品や雑貨類はECでの売上が多い分野です。

スマートフォンが普及したこともEC市場にとって追い風となりました。多くの人がスマホやタブレットを利用して、気軽にオンラインショッピングを楽しんでいます。世界的にインターネット環境が整備され、海外の商品であっても誰でもインターネットを経由して海外の製品を購入できるようになりました。

まとめ

アメリカのEC市場は市場規模が大きいだけでなく、1人当たりの購入額が大きいのが特徴です。世界一大きな市場は中国ですが、法律や言語、ニーズ面といった障壁が数多くあります。また、アマゾンが生まれたアメリカはEC市場が広がりやすい環境が整っています。海外進出を目指す企業にとって、EC市場はコストも抑えられ今後の成長も見込める魅力的な市場です。海外進出への足掛かりとしてインターネットを利用した事業も一つの選択肢になるでしょう。

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hawaiiwater

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