都内スタートアップの海外進出を支援するX-HUB TOKYOは、世界に挑戦する起業家や支援者が集う『X-HUB TOKYO DEMO DAY ~LEAP into the WORLD~』を開催。

デモデイ当日には、Forbes JAPAN副編集長の谷本有香氏をモデレーターに、海外VCのRouven Dresselhaus(ルーベン・ドレッセルハウス)氏、Jeffrey Paine(ジェフリー・ペイン)氏、Steve Goldberg(スティーブ・ゴールドバーグ)氏の3名をむかえ、「日本発スタートアップが海外で勝つためには」トークセッションが行われた。 日本のスタートアップが世界で成功を掴むには何が必要なのか、世界各地のエコシステムがどうなっているのか、当日の内容を取り上げる。

ドイツではユニコーン企業が18年間でおよそ15倍に

Cavalry Ventures ルーベン・ドレッセルハウス氏

谷本有香(以下、谷本):本日は、日本のスタートアップがどのように世界で戦えばいいのか、国内外でインパクトを与える為に何が必要なのか、世界のエコシステムが現状どうなっているのかをお伺いしたいと思います。まずは自己紹介をお願いできますか? ルーベン・ドレッセルハウス(以下、ルーベン): Cavalry Ventures創設者でマネージングパートナーのルーベン・ドレッセルハウスです。私たちは、大きいマーケットを狙って起業したいと思っている人を支援しています。起業のサポートはもちろん、私たちのエコシステムのエンジニアなど、人材サービスもサポートしています。 ジェフリー・ペイン(以下、ジェフリー):Golden Gate Venturesのジェフリー・ペインと申します。シンガポール出身です。ベンチャーキャピタルではこれまで35社以上のスタートアップ企業に投資してきました。 スティーブ・ゴールドバーグ(以下、スティーブ): Venrockのスティーブ・ゴールドバーグと申します。Venrockは世界でも最も歴史のあるベンチャーキャピタルの一つで、50年以上前に設立しました。私は20年ほどVenrockと関わっており、CEOに就任したり、ハードウェアやテック系の企業をサポートするオペレーションパートナーとして働いたこともあります。 谷本:ありがとうございます。早速テーマに入っていきたいのですが、まずは世界各国のスタートアップのエコシステムにはどのような特徴があるのか、それぞれにお伺いしたいと思います。 ルーベン:最初はヨーロッパ、そしてドイツのことをお話します。 まず、ヨーロッパはシリコンバレーと似ていて、まだ若いエコシステムです。大きな特徴としては、資金の出し手が多く存在することでしょうか。資本の効率性に関してはシリコンバレーより優れていると思いますし、アメリカと同等、もしくはもっと大きい人材プールがあります。マーケットに関しても、アメリカでは50州それぞれに違う州法がある一方で、ヨーロッパではそれがある程度統一されていることもメリットだと言えるでしょう。 ヨーロッパでは、2000年から2008年の間はユニコーン企業が2社しかありませんでしたが、2010年から2018年の8年間で31社にまで増えました。それに加えて、ヨーロッパのエンジニアは600万人に対してアメリカは450万人なので、エンジニアのプールも大きい。 そして次にドイツです。例えば「Delivery Hero」や「Rocket Internet」など、ドイツのスタートアップや起業家は実行力に優れていて、才能に溢れていると思います。スタートアップでは失敗も多いため、クリエイティブなことを始める為には、失敗も受け入れる環境が整っていることが重要です。ベルリンでは、失敗をしても受け入れることができるマインドセットが人々に備わっているため、挑戦がしやすい環境であるといえるでしょう。 谷本:ありがとうございます。次にジェフリーさん、シンガポールはいかがでしょうか?

Golden Gate Ventures ジェフリー・ペイン氏(左)

ジェフリー:東南アジアやシンガポールには6.5億の人々、10の言語や文化が集まっています。この中でインドネシアが一番大きい国で、人口が2.5億。おそらく10年後、インドネシアのGDPが世界で5位になるでしょう。 現在、シンガポールは東南アジアの経済の中心地であり、富を築く為に多くの人が活躍する場となっています。周辺国と比べると発展している国なので、スタートアップ企業に対する政府からの補助金制度も整っています。人口500万人ほどの小さい国ですが人材は多く、法律も柔軟なのでスタートアップを簡単に始めることができる環境だと思います。 谷本:ありがとうございます。スティーブさん、スタートアップNo.1地域のシリコンバレーの未来をについてどう考えていますか? スティーブ:シリコンバレーの「良い点」と「良くない点」を話しますね。 良い点は、やはり「歴史」です。たくさんの人々が連続的にスタートアップを設立し、その積み重ねで出来上がったエコシステムがあるおかげで、現在のシリコンバレーがあると思います。現地にはベンチャーキャピタルだけではなく、法律事務所やコンサルティング企業が多く存在していて、企業にCFOがいなくてもファイナンスの専門家にお金さえ払えば、取締役会にきてくれて財務状況を確認してくれます。歴史の積み重なりで、必要なものがすべて集まるエコシステムが整っていることがシリコンバレーの最も良い点なのです。 一方で悪い点ですが、人をたくさん雇うことが難しい事が挙げられます。なぜならシリコンバレーは決して広い地域ではなく、混雑していて地価も物価も高いためです。ニューヨークやシアトルなどにもスタートアップエコシステムは存在しますが、アメリカ全体を見るとシリコンバレーほど整備されているエコシステムは少なく、未発展の所が多いのです。


海外VCからみた、日本の強みと弱み

Venrock スティーブ・ゴールドバーグ氏

谷本:続いて伺いたいのが、日本のスタートアップについて外の視点からどのように考えられているのか、強みは何なのか、そして何を期待できるのか、お聞きしたいと思います。 ルーベン:日本はITや医療、ロボット工学、AI分野でも進んでいますし、ブロックチェーン技術においては世界を牽引するリーダーです。日本のある金融サービスによると、350万人の人々が日常的に暗号通貨の取引をしていて、日本では主流になっているそうです。なので、大きな成功をする為に必要な要素が十分日本にあると思います。 ジェフリー:日本のスタートアップには、海外マーケットに関する知識が足りていないと思います。国内マーケットに関する知識は深いけれど、拡大するには海外の知識も必要になる。それと、現在問題になっているのがエンジニアの人材不足ですね。内面的な課題だと、リスクを負うマインドセットを持つ起業家が少ない。つまり挑戦することがまだ足りないのです。 なので、私からのアドバイスは「もっと世界を旅して、友達を作ること」。英語の勉強も大切ですが、世界中に友達を作ることの方がもっと大切だと思います。旅をすることで新たな視点を得て、自分と向き合い、考えられるようになるはずです。また、日本は閉鎖的な文化なので課題などを共有する場があまりない。ファウンダーや起業家は毎日のように何かの問題にぶつかるので、それを互いに共有しあう環境が必要ですね。

谷本:日本では「失敗したくない」という考え方がスタートアップをする時に乗り越えなければいけない課題ですが、失敗をしないために気をつけるべきことは何か、もし具体例があれば教えていただけますか? ルーベン:私たちは起業家なので、心の中では「最終的に成功する」と思っています。ですが、起業家10人中9人は失敗しているのが事実です。世界中の起業家に当てはまる重要なことは「起業してローンチするサービスやプロダクトがマーケットにフィットするかどうか」ということ。完璧主義で、長期間にわたって開発した商品をマーケットに出してから「売れない」と気づくことは大きな失敗です。まずは、極力時間やエネルギーを使わずに「まずローンチしてみて、それから考える」というように効率的に出していくことが重要です。 もう一つの重要な点は「チーム」です。良いチームは悪い会社を救えますが、悪いチームは良い会社を失くす。会社のビジョンは何なのか、自分の役割は何なのかをしっかり理解して、互いにぶつかり合う文化がなければいけません。その際、必要以上に丁寧になる必要はなく、率直に話して戦う必要があります。私が思う良い企業とは、チーム内でぶつかり合う文化が整っていることが多いです。 スティーブ: アメリカでは「今までどんな人と仕事をしてきたか」をきちんと話せる人でなければ投資家として選ばれることはありません。しかし、自分が起業家になった時は、とにかく資金が欲しいがために、深く考えずにすぐ外部から資本を入れてしまう。失敗している起業家の大半は、そのパターンが多いと思います。 なので、自分が関わる投資家には「どのような会社に投資してきたか」「どこの取締役会のメンバーだったのか」などはきちんと聞くべきだし、以前一緒に働いた人の名前を聞いて、その人たちにその投資家の行動などについて聞くべきだと思います。 その人のことを詳しく確かめずに受け入れるような間違いは、絶対にしないでください。投資してくれる人がいても、簡単に受け入れないでください。いい投資家であれば、経歴やどのような人と関わってきたのかを聞かれても正直に答えてくれるはずです。話した結果、信用できなければいくら資金に困っていてもやめるべきです。短期的な欲求に負けて、そのような過ちをしないようぜひ気をつけてください。