南場智子が語るこれからの世の中に大きなインパクトを与える方法論 | 【東京都主催】海外進出支援プラットフォーム「X-HUB TOKYO」

南場智子が語るこれからの世の中に大きなインパクトを与える方法論

vol.17株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役社長

南場 智子さん

2019.06.20

国内スタートアップの海外進出を支援するX-HUB TOKYOは5月22日、都内起業家の海外展開を強力にバックアップするキックオフイベントを開催。

2019年度に始まるプログラムの概要発表、海外大企業による協業ニーズの過去事例発表が行われた。

キーノートスピーチで登壇したのはDeNA創業者である南場 智子氏。都内起業家の海外展開を後押しいただくようなスピーチをお届けする。




20年で日本を代表するIT企業に成長

今年は私にとって特別な年です。会社を興して丸20年経ちました。

20年を振り返ってみての心境はというと、長いような短いような、またその逆も然りです。その中でもいくつか誇れることと残念なことがありました。

誇れることというのは、よく生き残ったということです。たくさんのユーザーに向けて楽しくて役に立つサービスをお届けし、日本を代表するようなIT企業に成長したことです。どんな時でも決して下を向かずに諦めず、真面目な努力を続けられたということはとても誇りに思っています。

また残念なことはというと、これまでのところ、世界を代表するIT企業になれなかったことです。そこが一番悔しいです。世界に大きな喜びを届けようと取り組んだ時もありましたが、オペレーション・作戦・戦略全てがうまくいかず、頓挫しています。

スマートフォンが台頭し始めた頃からドミナントなプラットフォームは全て米国勢に持っていかれてしまいました。

これは我が社の問題だけではなく、日本の問題でもあります。


スタートアップ企業の活性化が必須

平成の30年はITが隆盛を極めた時代です。この時代に日本は世界に対してグローバルマーケットで圧倒的なインパクトを提供する企業を生み出しただろうかというと、残念ながら日本勢は惨敗であります。

戦後、日本は世界に大きなデライトを提供する企業を生み出してきましたが、それが平成の時代には叶わなかったということになります。この状況を打破するためにもやはり新しい企業をたくさん生み出していかなければならないと強く感じています。

もちろん大企業も頑張らなければいけないし、我々のようなメガベンチャー企業も諦めずに頑張るつもりです。そして、日本の問題ととらえたときには、スタートアップ企業の活性化というのは必須であると考えています。

 

しかし、日本のスタートアップ企業というのは中国や米国と比べて数も質も遠く及ばない状況であります。昨今は優秀な若者が起業を始めていますが、グローバルスタンダートの起業はまだとても少ない。せっかく日本で生まれたスタートアップも、なぜか中途半端な規模で中途半端に上場して終わってしまう、という状況になってしまっているのです。


ゆるやかに連携しながら大きなインパクトを提供する時代に

 

これには様々な原因がありますが、根本には教育の問題があると思っています。これまでの教育というのは、答えが一つ、決まった答えを言い当てるような教育、つまり間違えない達人を量産する教育制度になっています。戦後の日本の発展ではこの仕組みが最高でした。平成の時代になり、誰も見つけていない答えを見つける、創り出す力が要となってきて、かつての教育システムが通用しなくなっています。そんな中でDeNAは、人材の教育に力を入れてきました。

 

人材を見極めるときに、非常識さを重視しています。いわゆる常識に隷属していないか、あるいは権威におもねらないか、ということです。そして会社に入った際には、答えを言い当てるのではなく、オリジナリティをおもねらず堂々と発揮する人材に教育しているつもりです。

 

そのような人材を世界に後押しするためにも、DeNAとしてファンドを組成し、DeNAやその他の企業で活躍している人材の起業をとことん支援するプログラムを設立しました。

ただ今、DeNAは野球とゲームだけの会社ではなくて色々な事業をやっています。その事業を外部に向けて解放していくということも考えています。

我々が持っている様々なサービスや施設などを解放し、企業家のアイデア創出のために提供する。時には顧客やパートナーになるということで何か新しいことが出来るのではと考えています。

 

いままでのDeNAは、DeNAが主体として推進する事業に集中してきましたが、これからはお互いが持っているものを共有しあい、1社ではなく手を携えてゆるやかに連携しながら世の中に大きなインパクトを提供するという時代なのかなと考えています。

 

子どもは生き様から最も大切にする何かを必ず学び取る

先日イチロー選手が引退をしました。その会見の際に私が一番感動したのは、野球人生の中で1番誇りに思ったことは何かを問われた場面でした。どのヒットの話なのか、どの賞、どの試合のことを言うのだろうかと思って聞いていたのですけれども、イチロー選手が言った言葉は「ヒットが打てない、試合も出れるかどうかもわからない、という状態での最後の1年で、ルーキーと同じように毎日欠かさずルーティーンを行い準備をしたこと」だったのです。この言葉に私は本当に心が震えました。

 

またタイガーウッズというゴルフ選手がいます。彼は大変優秀な成績を残したあとに怪我をして色々な問題を起こしてどん底の状態から這い上がってきたわけです。マスターズで復活優勝した時のコメントで「子どもにこの姿を見せられて良かった」と言ったのです。

しかし、仮にそこで優勝しなかったとしても、子どもはお父さんを誇りに思わなかっただろうか。私は予選落ちしていたとしても、それでも全く変わらないようなリスペクトと愛情を子どもは持っていたのではないだろうかと思います。

 

それはどんなにどん底の状態でも這い上がる努力を1日も欠かさなかったという生き様を見せたことが重要で、仮に結果が伴わなくても子どもはそこから最も大切にするべき何かを必ず学び取っていたのではないかと思いました。

 

このように、基本的には人生はいまいるところからその時その時目標があって、そこに向かって一直線ではなく、紆余曲折して時には後退していくものなのです。


様々な人と手を携えて世の中に大きなインパクトを与える

DeNAの20年もそうでした。これからの道のりは、私たちがやり残したことを絶対に達成するんだという気持ちで進むと思うのですが、その中でも紆余曲折し後退するときも必ずあると思うんです。しかし、私たちが後世に残すものは輝かしい実績や功績というよりも、努力した生き様というのが色々な人に感動を与えてみんなの頑張る元気の源になるのではと思っています。

 

今回、私たちが色々な人と手を携えて世の中に大きなインパクトを与えていこうと言った時に、やはり一つ譲れないのがこの道のりのところで決して後ろを向かず諦めずに、そして正直に誠心誠意、誠実に頑張るという姿勢です。

この姿勢だけは、手を携える仲間として高い次元を求めていけたらと思っています。

ありがとうございました。