デジタル・デンマークが導く次世代型社会システムとは? | 【東京都主催】海外進出支援プラットフォーム「X-HUB TOKYO」

デジタル・デンマークが導く次世代型社会システムとは?

vol.19

2019.09.04

国内スタートアップの海外進出を支援するX-HUB TOKYOは7月25日に「ビジネスに適した国」「欧州でビジネスのしやすい国」ランキングでも1位に選ばれたデンマークでの事例紹介セミナーを開催。いままで多くの企業とのプロジェクトを行い、EU進出のサポート経験を持つデンマーク大使館の中島健祐に、デンマークでのビジネス展開の魅力とその先の展開について、ご講演いただいた。


ビジネスを牽引する国デンマーク

デンマークでは、デジタル化が進んでおりバーチャルとリアルとモノとサービスが、デジタルを軸に統合されてきています。このような動きが起きている理由として、EUが毎年出している、デジタル化ランキングで3年連続デジタライゼーションNO.1になっています。スマートシティでも世界トップクラスです。

 

日本が数年前に入れたマイナンバーを、デンマークではCPRナンバーと言います。1968年に導入しているため50年近い実績があり、社会保障先進国で社会福祉の国なので、他国では民間会社が提供するサービスを公的に考えていこうとしています。そこにデジタル化が組み合わさると、公的機関が今まで溜めていたビックデータをオープンデータとして活用できます。それらをオープンデータデンマークというサイトをつくって、各都市に間するデータを統合しているのです。

 

CPRナンバーは、産まれてから今まで生きてきた全人生データがロジカルに紐づいています。保育園、小学校、大学、留学や社歴に収入や移転の履歴という公的機関の持っているすべてのデータはこの番号に紐づけられています。医療関係も、過去の通院データや入院、投薬、手術や検査の履歴や遺伝子の情報までが入っているのです。

CPRナンバーが出来たきっかけはWindows95です。インターフェースを見た時に政治家や行政の方たちが、うまく組み合わせられれば非常に低コストで、レベルの高い行政サービスを提供できると考えました。その後2000年初頭からさまざまなテストをして、2011年、12年から一気にインフラとして普及していきました。


人工知能で世界のフロントランナーとなり、人工知能国家をつくる

日本でデジタライゼーションは、コスト削減や効率性に重きを置かれますが、デンマークの場合は当たり前で、成長していくためにどのようにデジタル化をしていくかが重要な議論のポイントになっています。もうひとつポイントなのが、日本でDX(デジタルトランスフォーメーション)やデジタル化というと、一般的には企業の中におけるDXと行政機関における効率化というのが主題になってきます。しかしデンマークの場合は、行政、企業、市民、そして社会システム全体、国まるごとDXということがキーワードです。

 

それからデンマークの人工知能戦略で、人工知能で世界のフロントランナーになると宣言しています。最終的な狙いは、説明可能なAIをガバメントセクターのインフラに入れていきたいという強い意思を持っており、人工知能国家をつくるというのがデンマークの狙いです。

 

日本の場合は技術ファーストなので、何のためにスマートシティをつくり、どの方向に行くのかという議論が希薄です。デンマークでは都市のソリューションをつくるのではなく、国家が成長し環境に配慮し、なおかつ小さな成功体験を世界中に共有するということをしています。

他の国とデンマークの違いは、社会保障に関係していることです。単にデジタル化というだけではなく、公共の福祉や所得の再配分をして、すべての人が豊かになるという理念を持っています。さらに理念だけではなく、環境に配慮した環境知性や人間中心主義など、そこに住んでいる人が世界一ハッピーといった非常にユニークな体系が出来ています。エネルギーのインフラやスマートシティなどリアリティのある実証も含めて、理念に同期するような形で展開しているのもポイントです。


人間中心主義、ホリスティック、デジタル統合、デザイン、創造的リーダシップとは

 

人間中心主義のコンセプト、包括的・全体的なアプローチ、デジタル統合、デザイン、創造的リーダーシップというのを説明したいと思います。

 

人間中心主義のコンセプトですが、よく人間だけが豊かになってはだめで、世の中には動物も植物もいるので、もっとホリスティックに見なければいけないと批判する人がいます。デンマークでいう人間中心というのは、きちんとSDGs(持続可能な開発目標)とリンクした形で地球環境に配慮し、なおかつ社会福祉の理念も考慮したのが人間中心主義です。非常に視野の広いヒューマンセントリックな考え方を持っています。

 

次はホリスティックなアプローチです。デンマークで展開されている先進的な廃棄物発電施設を例に説明します。廃棄物を使ってコペンハーゲンの5万世帯に電力を供給し、12万世帯に地域熱供給をするシステムになっています。ここにホリスティックな仕掛けがあり、屋根が斜めで人工スキー場になっていて、廃棄物発電施設とリゾート施設が組み合わさっているのです。

廃棄物発電や刑務所は必要ですが、自分の家の近くには建てないでほしいといった施設に、価値を上乗せして逆転させるという発想をしています。迷惑な施設にリゾートを入れスマートシティの新しいフレームワークをつくり、さらに投資を誘発して、コペンハーゲンの都市にリゾート地を持ってくる、このようにダイナミックな付加価値をつけることがまさしくホリスティックです。

 

次に統合デジタルです。デジタル化で色々繋がってきています。これから起きることというのは、遠隔医療や洋上風力だけではなく、テクノロジーとデジタルをかけ合わせるということです。場合によっては、2つや3つのモノが組み合わさって1つのモノをつくるということを、どのように具現化をしていくかということです。

 

次にデザインですが、今やろうとしているのはプロダクトではなくて、デザインで社会システムを変革するということです。テクノロジーで世の中を変革しようという動きですが、問題はテクノロジーがどのように社会で使われているのかを理解しなければこれから戦えません。なぜかというと、量子コンピュータやロボットをユーザーはそもそも知らないのです。知らないモノをユーザーに聞いても答えは出ません。ですのでこれから起きるデジタル・ディスラプションの時代は、専門家がデザインを使ってユーザーの半歩先を行き社会喚起していこうというアプローチになっていきます。

 

最後に創造的リーダーシップです。何のために世の中で仕事をして、どのような価値を生み出そうとしているか、デンマークの観点で重要なのは価値創造となります。単に自己実現というだけではだめで、いかに世の中に価値をつくって貢献できるかということがデンマークの社会では当たり前です。 残念ながら日本の教育システムを見た時に、相変わらず知識主導で知識詰め込み型ですが、これから重要なのはその知識をいかに世の中のために変えていくかという見識と、実際フィールドに展開して社会に実装するためのリーダーシップと胆力です。

 

デンマークを含めたヨーロッパの先端地域では、人間中心主義、包括的ホリスティック、デジタル統合とデザインの利活用、創造的リーダーシップが見られます。ベンチャーでも成功している企業でもこれらは揃っているのです。日本ではこのあたりの議論はされていませんが、今後はかならず直面していきます。その時はこれをヒントに今後の事業展開に活かしていただければと思います。 ご清聴ありがとうございました。