国内スタートアップの海外進出を支援するX-HUB TOKYOは8月7日、香港におけるビジネス環境およびポテンシャルと具体的な進出ノウハウを学ぶ講演を開催した。ICTやIoT、Fin Tech等の分野を中心に世界随一のスタートアップエコシステムとして成長を続けている香港。その香港において政府系イベントすべてを管轄している「香港貿易発展局様」をお招きし、香港・中国マーケットの最新情報や、香港・中国進出を検討するにあたって必要なプロセス・活用できる仕組みについてお話いただいた。


香港におけるスタートアップ事情最前線

〈講演者〉Zeroth. AI, Mr. Tak Lo, Founder(拠点:香港)
私は香港出身で、東京にもオフィスがあります。私たちは基本的にベンチャーキャピタリストであり、世界中に投資しています。以前私が経験したのはTechstarsという、世界最大のアクセラレータプログラムでした。約3年前に香港のスタートアップ13社に投資しました。

 

そしていま、日本には私たちが投資した5つのスタートアップがあります。私たちは自動運転に投資し、FintechとFinanceにも投資しました。これらは、EMCのポートフォリオにおける上位の投資の一部です。私たちが日本にいる理由のひとつは、日本の市場や投資家がAIを愛していると考えているからです。1967年から香港でさまざまな出来事がありましたが、歴史的なデータと数字は香港が非常に回復力のある都市であることを示しています。時間経過とともに回復し香港経済は長期的に繁栄しています。

 

私が気づいたのは、香港のインフラは24時間の作業に適しているということです。交通インフラは安くて正確であり、毎日深夜まで運行し、午前5時頃に始発が出ます。通信インフラは本当に素晴らしく、LTE、ブロードバンドも利用しやすく、簡単に銀行口座を開けます。もうひとつのポイントは、グレーターベイエリアです。グレーターベイエリアは香港周辺の7、8の異なる都市です。深セン、香港、マカオ、珠海など大湾岸地域内にあります。これらの異なる都市間の貿易を促進し、香港は近い将来に広大なベイエリアで中国本土とビジネスする能力を増加させるでしょう。

最後に、香港は国際ビジネスや国際的なスタートアップにも大きな影響力を与えてくれると信じています。


在香港ベンチャーキャピタル日本人創立者が伝える香港ビジネス最新事情

昨年度から日本にて12月から3月で第1回目のアクセラレータプログラムを行いました。日本も含めて、世界で一番大きいAIのエコシステムを作っていけるのではないかと考えています。日本のパートナーでもある、カーネルとディープコアといったAIのファウンダーに当たる方たちをインキュベーションさせて、私たちが実践事業をアセスメントしています。日本での活動は、メインの事業であるアクセラレータプログラムと、AIのエコシステムを作るというところでは、毎月AI関連のミートアップです。

 

私自身ずっとスタートアップのファウンダーをやっていますが、やはりインフラの部分が少し違うと考えています。企業やスタートアップ、銀行、政府が全体でインフラを作っていければおもしろいのではないでしょうか。AI系の事業では、テクノロジードリブンで新規事業を作ろうとしています。ですが、私たち自身がファウンダーなので、問題点を見つけやすく、技術的な問題解決を実際のユーザードリブンでのソリューションも提供できます。これらを大手企業などに 伝えることで日本のスタートアップシーンというものが活性化できるのではないかと考えています。


グローバリゼーション拠点としての香港の魅力と活用方法

 

〈講演者〉Fringe Ventures, Mr. Takashi Hongo
私はいま香港を拠点にしていて、その前はボストンでした。香港とボストン、シンガポール、東京でビジネスをする上での経験や個人的なストーリーをお話したいと思います。あとは香港をグローバリゼーション拠点としたときの私が思っている、香港の活用方法をお話いたします。

 

まず香港についてですが、東京ベイエリアとグレーターチャイナベイエリアは、飛行機でわずか4時間で行けるためこれらを一つの経済圏として捉え、東京エリアと香港エリアの二つを合わせることで巨大な経済圏となります。東京の経済圏がこれ以上伸びないことを考えると、この二つの経済圏を、一つのビジネスでつなぐ取り組みは非常におもしろいです。 また、今後ビジネスをする上でも、グローバルアントレプレナーとしても、どこをベースにして仕事をするのかは非常に大きな問題となってきます。とくに今後の日本を取り巻く経済的、政治的な環境を考えると、ロケーション選択はたいへん重要です。その中でイノベーションエコシステムの観点を考えると、ビジネスや関わるスタートアップを自分がどこを拠点とすることで一番伸ばせるのか、といった選択肢を常に持っている必要があります。

 

スタートアップエコシステムとして有名なのは、シリコンバレーやニューヨークですが、香港も最近では認知度が高いです。なぜ香港の認知度が高くなっているのかといいますと、スタートアップサクセス、グローバルリーチ、グローバルコネクティッドネス、ローカルコネクティッドネス、タレントコストアドバンテージなどが非常に高いレーティングであることがあげられます。具体的には、ファンドレイジングが高い成功率を示したケースが多い、GDP対比で海外の顧客への販売比率が高い、ローカルの起業家や投資家との接続が優れているなどです。東京もタレントコストアドバンテージが非常にあるエリアなのですが、香港もタレントコストアドバンテージが非常にあると言われています。

 

どのロケーションを選ぶのか、私が個人的に検討項目としてあげているのは、まず日本とのビジネス頻度です。時差の問題が非常に大きく、毎月東京に戻ってきたいかどうかが重要となります。次に外国人としてビジネスをする際の会計法務のわかりやすさです。その他に英語圏や中国語圏とのビジネスのしやすさ、地政学的な安定性も重要になってきます。あと税制、オペレーションコスト、文化、日本人としての暮らしやすさ、そしてインターナショナル都市であるかということも大事です。あとは気候や景観、これは個人的な好みもありますが、長く住んでいるとボディーブローのように効いてくるのでたいへん重要だと思っています。

 

これらの検討項目で私がなじみのある都市を見てみます。まずは香港ですが、日本とのビジネス頻度は時差1時間、飛行機でわずか4時間で行けるため、月1回の行き来は苦ではありません。さらに外国人がビジネスをする上での会計法務は、アメリカと比べても香港は圧倒的に楽です。英語圏、中国圏とのアクセスは当然できます。日本人としての暮らしやすさですが、色々な所で暮らしてみた私個人の観点でいうと、非常に暮らしやすいです。なぜならば香港の人達は非常にオープンで、外国人慣れしています。言語ができない、文化が合わないというような疎外感をおぼえたことがありません。そのため、長く暮らしてもストレスになりません。気候、景観でいうと、山があるのでたいへんなじみがあります。起業家の方はよく香港とシンガポールを比較します。香港に行くと、なぜシンガポールではなく香港なのですかと必ず聞かれますが、個人的には少し変わった人や少し違うことやりたい人が香港に来ている印象です。長く住んで楽しくおもしろく自分のしたいビジネスをするという方は香港に合っているようです。

 

次にボストンですが、日本から遠いのであまりなじみがないと思います。ボストンはいま再開発がたいへん進んでいます。ライフサイエンスだけでなく、IoTの拠点にもなっています。これはGEがIoTの研究拠点を移し、それに関連したエンジニアが一つ大きなエコシステムを作ろうとしていておもしろい都市になっています。これからの時代、アジアに経済的な重心が移ってくることを考えると、中国市場とアクセスが悪いためビジネス拠点ではなく、アカデミックな研究拠点をボストンに開くのは使い勝手が非常にいい思います。

 

最後にスタートアップにおける香港の活用方法ですが、香港はスタートアップやシステム全体の経験値が非常に高くなっている状態です。サイズやリソースという形で出ているので、バリエーションが高くなっている状態です。香港のグローバルリーチやグローバルコネクテッドネスをうまく活用することで、東京から近い香港エリアをどのようにグローバルなコネクテッドハブにしていくのか、そして拠点にしていくのかということが重要な命題となってきます。そうすることでグローバリゼーションのステップアップができていくのではないかと考えています。