Hello Tomorrow「ディープテックスタートアップの海外展開動向」 | 【東京都主催】海外進出支援プラットフォーム「X-HUB TOKYO」

Hello Tomorrow「ディープテックスタートアップの海外展開動向」

vol.21

2019.11.01

技術に着目したエコシステムの創出に力をそそぐ国際的NPO、Hello Tomorrowに登壇いただきました。また、彼らのチャレンジ(スタートアップコンペティション)に参加した日系スタートアップに、世界の技術系スタートアップを取りまく状況と、海外展開成功への秘訣についてご講演いただきました。


Hello Tomorrowの提供するプラットフォームとは

〈講演者〉 Mr. Jean-Dominique Francois
Hello Tomorrowは、5年前からディープテックのエコシステムなど、さまざまな研究をしてきました。毎年新しい研究のリポートを発表しています。ヨーロッパやアメリカの有名大学やインキューベーターなどとパートナーシップを組んできました。
いままでのイベント、チャレンジやサミットへの参加者は世界中で2万5000人くらいいます。その中には投資家、スタートアップ大手企業の方々も参加しています。

 

毎年Hello Tomorrowグローバルチャレンジを開催しており、4500社ほど集まります。プロジェクトの85%はスタートアップで、残り15%はまだ会社設立前です。新しい技術でプロダクトをつくりたい方々が集まり、コミュニティーをつくっていくのがHello Tomorrowの特徴です。そのため世界各国の非常におもしろい方々が集まります。

 

毎年9月のチャレンジ後に、10月から12月に世界中でサミットがあります。来年の3月にはフランスでグローバルサミットが開かれます。 毎年数千のプロジェクトの中から一つだけグランドウィナーを決めています。

 

いままでプロジェクトの多くがアメリカで次に中国やヨーロッパです。日本では、二年前にこの活動を始めて、昨年は50社ほど集まりましたが、まだディープテックスタートアップは少ない状況です。それは二つの問題があると思っています。一つ目に、技術はあるが、技術だけでプロダクトのターゲットがいないこと。二つ目は日本のスタートアップエコシステムが、それほどインターナショナルではないことです。しかし、私たちHello Tomorrowはこれを支援したいと考えていて、日本で大小さまざまなイベントを行っています。来年は、日本で9月から12月にイベントがありますので興味のある方は注目してみてください。


なぜ海外を目指すのか、技術系スタートアップならではの課題や問題意識

〈講演者〉山本 憲二郎
私たちは、組積造住宅と呼ばれるレンガや石などを積み上げた住宅に、ペイントすることで耐震補強をすることをテーマとして活動しています。
組積造住宅は、世界中でしかも地震多発地域でも多く使われているという現状があります。問題としてこの組積造住宅は、地震に対して非常に脆弱だということです。21世紀に入ってもなお被害が出続けています。途上国のみならず、イタリアのような先進国でも地震が起こると町が壊滅してしまいます。過去100年間の地震による死者を原因別に見てみると、組積造住宅の崩壊による死者が圧倒的多数です。私たちのミッションは、これをゼロにするということ、コーティングをするだけで耐震補強することをコンセプトにスタートしました。

 

コーティングは、特殊な繊維強化型の樹脂になっていて、塗るだけで耐震補強ができます。そのため使いやすく特別な技術もいらず、時間と労働力の削減ができるといったアドバンテージがあります。また高強度樹脂は、建物などの大面積に塗るほどコストが高くなるのですが、私たちは、それを10分の1から20分の1までコストを抑えて建物にも塗れるようにしました。ちなみに、このコーディングした建物は、震度7にも耐えられるという実験結果が出ています。

 

マーケットサイズとしては、いままで誰も解決してこなかった問題ですので、12カ国に絞ってもまったく手付かずのかなり大きいブルーオーシャンです。その中でもインドやインドネシアは人口が多く、組積造住宅も多くあり地震多発地域であることから最大のマーケットです。私たちはいま、ネパールやフィリピンからオファーがきており、現地のパートナー企業と組んで市場に進出していこうと考えています。

 

ここからは、なぜ海外を目指すのか、ディープテックスタートアップの課題と問題意識といったテーマに答えていきたいと思います。まずはなぜ海外を目指すのかですが、そもそもこのプロジェクトは、地震による組積造住宅での死者が多数いるという世界規模の課題を解決したいという思いから始まりました。さらには、市場開拓のしやすさや、市場規模が日本よりも圧倒的に大きいということが挙げられます。現地ネパールのパートナー企業とディスカッションをすると、耐震性のある住宅は通常よりも高く売れるという話が出ています。このように世界を見渡すとこういった眠っている大きな市場があるのです。

 

次にディープテックスタートアップの課題と問題意識ですが、大きく二つあります。一つ目は技術オリエンテッドになっていないか、現地の人が本当に求めているものになっているかということです。二つ目が、これから出てくるライバルに対してどう戦っていくかということです。たとえば技術流出や、粗悪品、パクリ品への対策をどうするかというものになっていきます。

 

まず一つ目の技術オリエンテッドになっていないかということですが、私の所属している研究室では日本の高度な技術を海外展開する場合は、ローカルアベイラビリティ、ローカルアプリカビリティ、ローカルアクセプタビリティをきちんと守らないと普及しないということが鉄則としてあります。
アベイラビリティは、材料のことなのですが、材料の生産、施工、それからクオリティーコントロールまでを最終的にローカライズできなければ広まらない。アプリカビリティは、使うのに特殊すぎる技術が必要となっていないと広まらない。アクセプタビリティは、いい技術を持ってはいても、現地の生活や文化に合っていなければ広まらない。といったこの三つを鉄則としています。

 

二つ目のこれから出てくるライバルに対してどう戦っていくかですが、もっともコアな技術はブラックボックスにすることと、海外で売っていくのであれば信頼のおける力のある相手と組めるかです。特許を取ると自分の権利を押さえられるという意味ではいいのですが、同時に技術を公開することになります。一番大事な部分を公開するとリスクが高いためもっともコアな技術はブラックボックスにします。そして、信頼がおけて力のある相手と組めるかですが、基本的には複数社と仮契約をしていって、どれだけ売れるのかを見ていきます。商品を先に渡すことはせず、お金をもらってから商品を渡します。信用できそうでも技術流出には気を付けています。


Hello Tomorrowに参加した経験の共有

 

Hello Tomorrowは、世界最大規模のスタートアップコンテストなので、世界中から企業やVCが集まります。世界120カ国以上4500チームが応募してきます。その中のトップ500に選ばれると、投資家やVCと、1 on 1ミーティングができるところに呼ばれます。
私たちは幸運にもグローバルサミットでピッチができました。私たちは、日本で一番になったという理由で特別枠としてピッチさせてもらい、そこで見ていた方々からのアプローチがあり実際に商談となりました。投資や売り上げへの規模感が日本とはまったく違うと感じました。

 

Hello Tomorrowピッチコンテストの審査基準は、他のスタートアップコンテストと比較して、社会的インパクトを与える企業が注目されていると思います。そもそも審査は、点数ではなくディスカッションです。審査員がディスカッションで決めるという、変わった決め方をしていました。そのおかげで、私たちがHello Tomorrow Japanで優勝したと思います。世界大会での審査基準も明確に出ていて、一にインパクト、二にチームです。2017年にはバナナの皮で生理用品をつくるチーム、2018年にフェイクドラッグを調べるスキャナをつくるチーム、など社会的インパクトを与える企業が優勝しています。

 

まとめます、日本であまり投資対象とされない社会的インパクトを与えるビジネスが、Hello Tomorrowではとくに注目されやすいと思います。さらには、投資の規模感や投資家の種類、市場に関して視野が圧倒的に広がるのではないかと思います。
ありがとうございました。