国内スタートアップの海外進出を支援するX-HUB TOKYOは10月8日、オランダのライフサイエンス&ヘルステック最新動向と今後の展望を学ぶ講演を開催した。ヨーロッパ市場で先駆的な取り組みを続けるイノベーション先進国のオランダのライフサイエンス&ヘルステック業界の今後のマーケット環境や展望などを、オランダ経済・気候政策省の方々を招いてお話いただいた。


オランダに揃っている、
国際的なビジネス環境

〈講演者〉 ヨルン・ボクホベン

駐日代表 オランダ経済・気候政策省
企業誘致局 (NFIA)

多くの外資系企業がオランダを選ぶポイントとして、戦略的な立地、優れたインフラ、高度教育による優秀な人材の獲得、そして質の高い生活を送れるなどがあげられます。オランダには、このよう国際的なビジネス環境が揃っています。

 

オランダはヨーロッパのほぼ中央にあります。イギリス、ベルギー、ドイツ、デンマークなどに囲まれていて欧州の主要マーケットへのアクセスが非常に良いです。500キロ圏内に1.7億人のマーケットがあり、24時間以内のアクセスにおよそ2.5人億のマーケットに到達します。そして、アメリカから海底のインターネット線がアムステルダムに入りデジタルハブとしてもよく知られています。

 

優れたインフラとして、まずロッテルダム港というヨーロッパで一番大きな港があります。スキポール空港は、国際的なハブになっていて322都市、95カ国への直行便があります。そして鉄道は、中国からオランダのティルブルフまで行くようになったことで、DHLがグローバル連携指標の中で世界第1位の評価をオランダに与えました。

 

オランダでは中学から英語、フランス語、ドイツ語、オランダ語を勉強しているため、他国の言語を話すことが得意です。おおよそ三つから四つの言語を話せます。ですのでオランダで支店を作ると、本当のヨーロッパ拠点を設けられます。

 

最後に質の高い生活ですが、オランダの生活満足度調査で、高いスコアを得ました。オランダの子供たちが世界一幸せな国として考えられています。生活環境は、とくに日本人のためにさまざまことが準備されていて、アムステルダムの病院では日本語が話せる人がいたりします。

 

他国の会社がオランダで会社を設立するのは、かなり容易で約3カ月で設立することができます。しかも、最低の資本金はゼロです。スタッフ雇用は、フレキシブルな雇用形態がオランダでは一般的です。
税制は、周りの国と比べると税率はかなり低く、外国人従業員に対する有利な免税措置もあり所得税を軽減できます。オランダと日本は社会保障協定もありますので、オランダに行けば5年間は日本での社会保険料をそのまま使えます。
そのため現在、日系企業は600社ぐらいあります。マーケティング、営業拠点、欧州の物流拠点が多くみられ、他に製造拠点とか研究開発拠点をあります。日本企業によるオランダ企業の買収も増加しています。ちなみに現在オランダには9200名ぐらいの日本人が住んでいます。その半分くらいはアムステルダム付近に住んでいます。

 

日本企業がオランダを選ぶ理由して、オランダ人は英語を話せて非常にフレンドリーで日本人との相性がいい。そして優れた地理的な条件や有利な税制、利便性の高いロジスティクスが高く評価されています。オランダ進出のサポート体制としてオランダ企業誘致局が港区のオランダ大使館内にあり、そこで初期段階から多くの会社を無料でお手伝いしております。ご興味がございましたらいつでもご連絡ください。ありがとうございました。


バイオファーマやメディテック企業にとってのオランダの魅力

〈講演者〉サンドラ・デ・ウィルド

セクター・スペシャリスト(ライフサイエンス&ヘルスケア) オランダ経済・気候政策省 企業誘致局 (NFIA)
Invest in Holland – ライフサイエンス&ヘルス チーム ストラテジック・プロジェクト及び投資環境 主任

オランダには、ライフサイエンスとヘルステックセンターが世界でもっとも集まっています。
狭いエリアの中に12の大学、8カ所のメディカルセンターと420以上のバイオ、薬品関係の企業が集まっています。ヨーロッパの中でもオランダは、ヘルスケアシステム関連で過去何年もトップ3に入っている国です。メディカルセンターや大学、そして企業などがお互いに協力しながら研究を進めています。

 

ヨーロッパの医薬庁(European Medicines Agency)は、オランダすべての医薬関係の機関とも連絡を取っていて、このEMAでも1日200人から300人のエキスパートがさまざまな会議に参加し、関連大学の関係者たちとミーティングしています。
またヨーロッパ31カ国、51の規制当局がオランダには進出しています。その51の規制当局はすべて他の機関と連絡取りあっているため、とてもユニークなネットワークになっています。
EMAと加盟している国、すべてが協力して新しい薬品や新しい安全療法など関連する専門知識を提供して共有しています。ですのでヨーロッパで展開するには、一つの統括した規制システムに乗らないといけません。そのシステムは様々で、すべてに応用されるシステムの申請もありますし、難しい病気に関しては特別に申請が必要な規制などもあります。2,3カ国ぐらいへ展開しようとすると、認証の申請方法が変わってくるのです。

 

最近では、規制化学の革新的な取り組みも積極的に行っていて、この分野では日本とも連携できる可能性はあると思っています。たとえばバイオファーマ関係の製品は、ヨーロッパに展開しようとした場合その国で作っていなければ、特別な申請や研究所での認証を得る必要があるのです。そこでオランダでは、製造以外にも品質管理という分野も現在力を入れていて、各国に協力して様々なサービスを提供しています。


イノベーションで社会的課題の解決を考える

 

〈講演者〉エリック・ファン・コーイ

イノベーション・科学技術部参事官
オランダ王国大使館

オランダは、イノベーションによって支えられている国といっても過言ではありません。私たちは非常に野心の強い人種で、向上心やよりよい改善をしていきたいという気持ちが経済的な成長を支えています。いま課題となっていることは、イノベーションの力を使い社会的課題をどのように解決していくかということです。私たちが持っている知見や基礎技術を応用し社会的課題の解決を考えています。社会的課題には、エネルギー遷移、持続可能性、食、農業、ビジネス、健康、ヘルスケア、セキュリティーなどがありすべてを重要視していますが、その中でも私たちはヘルスケアやライフサイクルの改善をもっとも重要な課題と位置づけています。これらの課題解決は、国際的な協力なくして実現できると思っていません。ホライゾン・ヨーロッパという取り組みに積極的に参加して、国際連携をはかりながら課題解決していきたいと考えています。

 

ライフサイエンスという特定分野において、新しいイノベーション政策を打ち出しており、イノベーション・ロードマップを描く中で、市民社会で実際の取り組みに加わっていくことが非常に大事だと考えております。
新しいヘルスケアの分野で、3年間のイノベーション政策を掲げていて、2040年までに健康寿命を5年引き伸ばし、貧困層と富裕層の間の健康状態格差を3%減少させていきます。

 

研究機関との連携も大切ですが、それだけではなく起業家の力が必要です。スタートアップなくしてこれらのイノベーションの実現は難しいでしょう。ですので、エコシステムとして起業家を支援する活動を整備しています。資金調達、事業支援・協力、場所の提供や技術的提供などスタートアップの底上げをエコシステムが担っているのです。
私たちは、日本と外交的にも長いコネクションを持っており、もちろん医療の分野でも友好関係がございます。ヘルスケア、ライフサイエンスの分野でイノベーションが活発になっているいま、皆さんにもご協力いただければと考えております。 ありがとうございました。