イスラエルの最新エコシステム動向とイノベーションにおける日系企業の取り組み | 【東京都主催】海外進出支援プラットフォーム「X-HUB TOKYO」

イスラエルの最新エコシステム動向と
イノベーションにおける
日系企業の取り組み

vol.23

2019.12.18

国内スタートアップの海外進出を支援するX-HUB TOKYOは2019年10月28日、イスラエルの最新エコシステム動向とイノベーションにおける日系企業の取り組みを開催した。シリコンバレーに次ぐスタートアップ大国であるイスラエルは、成熟したエコシステムが形成されています。本イベントでは、スタートアップと大企業のそれぞれの視点からイスラエルのテクノロジー探索からスタートアップとの協業でビジネスを成功させる秘訣についてお話いただいた。


イスラエルのエコシステムの
最新動向と日系企業の動き方のポイント

〈講演者〉 Deloitte Israel 森山 大器氏

日本のデロイトトーマツベンチャーサポートから出向でデロイトイスラエルにおり、現地のイスラエル人と一緒に日系企業のサポートをしています。今日はイスラエルのエコシステムや、最新動向と日系企業の動き方から参考になりそうなポイントをお話いたします。

 

まず最も大事なことかと思っておりますが、日本で報道されているイスラエルの印象と実際にテルアビブ(イスラエル人口第2位の都市)に行った時の印象は大きく違うということです。日本で報道されているものはガザ地区やエルサレムなどが中心でテルアビブの情報ではないということです。テルアビブは、基本的にはリゾート地であり地中海に面した大変美しく、開放的な街。おいしい食事もいっぱいです。そのようなリゾート地でイノベーションというと不思議かと思いますが、その背景には軍役を通して最新の軍事技術に触れる機会があり、しかもそれを民間転用しすることが奨励されているという環境があります。起業する事業領域は世界のマーケットの流れを見て起業家が選んでいます。

 

イスラエルの技術はかなり尖ってはいるのですが、その“料理“を大企業側にしていただかないといけないものが多いです。シリコンバレーのスタートアップではサービスとしてそのまま使えるものも多いですが、イスラエルが開発しているものはセンサーなどのようにそれだけではビジネスにはなっていないものが多く、大企業との協業を行うことで初めてエンドユーザーに届くようなものが多いです。ですので日系企業側にその技術を使って何をしたいのかという明確な目的意識が重要なのではないかと感じています。

 

過去1年間で100社以上の日系企業と個別に議論させていただきましたが、イスラエルに取り組まない理由として「技術がいまいちなんじゃないか」という理由を言われることは皆無に等しく、イスラエルという国とビジネスを行うことに対する懸念が最も多い要因だと感じています。「そもそもイスラエルって大丈夫?」というような不安から第1歩を踏み出せないという方が多いです。

通常スタートアップと組むという話の場合は、まずはどういうことをやりたいのかがあり、次にそれにもとづいて技術の探索をします。その技術を見つけたら、その技術と事業会社のビジネスを統合していくという3ステップとなります。

イスラエルはすごくオープンな国で、シリコンバレーのように既得権益が積み重なってインナーサークルになかなか入れないというのとは違い、また親日ということもあり比較的会いたい企業と会えると思います。ですので大きな難しさというのは技術の探索ではなく、その先にある日本のビジネスと統合していくという3つ目のプロセスなのです。

 

第1歩ということでは、特にイスラエルに拠点がなくともリモートでイスラエルの方々とコミュニケーションしながら実績をつくることが可能です。例えば今までイスラエルのスタートアップに対して出資をしたほとんどの企業は投資を決めた段階では現地に拠点はありません。シリコンバレーの感覚ですと、インナーサークルに入るには現地に拠点が必要だという思いが強いかと思いますが、エコシステムが違えば前提も違います。イスラエルのようなオープンなカルチャーの国においては、きちんとした目的意識があれば現地に拠点がなくとも、最初の1歩は踏み出せるのです。

 

イスラエルは、シリコンバレー以上に小さいコミュニティです。街を1時間くらい歩いていると、知り合いに何人か会うんじゃないかぐらいの感覚だと思ってください。ですので評判はすぐに伝わります。日本企業は「May be」という表現をよく使うので困るという話を聞きます。やる、やらないをはっきりいって欲しいと。スピード感を持って日々身を粉にしているイスラエルのスタートアップにとって日系企業の「May be」という回答は、期待をさせるだけでお互いにとって時間の無駄になることが多い、というような話はよく聞きました。

 

最後のポイントは、日系企業の差別化です。いま370社ほどのグローバル企業がイノベーション探索を目的としてイスラエル現地に人を置いています。その中で顔が見える日系企業は30社くらいでしょうか。日系企業の進出が増えているので日本のプレゼンスが高まっていると思うかも知れませんが、日系企業以外にも300社以上が存在していることを考えると、日系企業が会うスタートアップは既にに他の国の企業に会っていると思った方が良い状況には代わりありません。日本は初動で圧倒的に遅れており、そうであれば、別のところで巻き返すということをしなければ、イスラエルのスタートアップからすると日本を選ぶ理由がありません。そのため、どのような点で日系企業を選んでもらうのかというところを訴求していくことが重要です。こういうのが欲しい、とりあえずテイクしようというだけではなくて、大企業として何がギブできるのかという姿勢を見せていくことが、大変重要なポイントになると感じています。


自分たちのビジネスに集中するために
イスラエルのテック企業と業務提携

〈講演者〉ニューロスペース 小林 孝徳氏

弊社の睡眠ビジネスス リープテックで何を目指してどのようにビジネスをつくり、テクノロジーで実現してきたのかということと、睡眠の継続を軸としてどのようにアーリーセンス社と、事業をコラボレーションしてきたかをお話したいと思います。

 

ニューロスペースは、私自身が睡眠障害で苦しんだ実体験がもととなった睡眠の悩みから始まっています。弊社のCTOは、筑波大学やテキサス大学で睡眠の基礎研究をやってきており、アカデミック領域とサイエンス領域で睡眠を見てきているので、アナライジング+ソリューションで睡眠改善ができるかということをやっていました。そういったCTOが居て、本当にわれわれはハードウエアというところまで入り込んで開発をしていくべきなのか、そうじゃないのか。体力とかお金も限られてるベンチャー企業の中で、どのような戦略を取っていくべきかをかなり密にコミュニケーションして、イスラエルの企業様との事業連携にいたりました。

 

弊社ソリューションの強みができたのは、集合型の睡眠研修を起業からずっと企業向けにおこなってきた背景にございます。2013年の創業から、およそ2年、3年ほどかけて企業に対して「あなたの企業だとどういう睡眠の悩みが特徴的です」ということと、事前にアンケートをとりその企業特有のお悩みを分析し、カスタマイズしたセミナーを提供するといったことをずっとやってきました。

 

これまでは、組織に最適化することでプログラムを提供してきましたが、一人ひとり適切な睡眠の在り方をきちんと計測して、毎日の睡眠データに基づいたアドバイスをアプリなどで提供していくことが重要かと思います。そこでテクノロジーを活用して一人ひとりに合ったソリューション提供していこうと思いいたり、イスラエルのアリーセンス社と提携いたしました。

自社でデバイスを開発するべきなのか迷いましたが、ベンチャーの課題でまずお金がありません。人的リソースもありません。ないものだらけの中で、何にリソースを集中するかを絞るためには自社でデバイスをつくるのは得策ではありません。アーリーセンス社のデバイスは、UIUX的な観点でも、サイエンティックなエビデンスの観点でも、非常に優れたものであることがわかり、われわれがスリープテックビジネスをしっかりとつくっていきお客さまの睡眠改善にフォーカスするためには、これを使う必要があるということで採用にいたりました。正確なデータが取れるというのは非常に価値が高く、われわれの企業向け睡眠プログラムが大きく進化しました。

 

最後に簡単にまとめます。われわれはスタートアップであるからこそ何に集中するべきなのか、コアは何なのかというところを見定めて、自分たちでやる必要がないことは素晴らしい技術やプロダクトをもつ企業と事業提携をして、うまくやっていこうというような判断をしました。そうしてスリープテックビジネスを日本で創出をしていっております。 ご清聴ありがとうございました。