世界トップレベルの研究開発拠点スイスの全貌と日本からの進出のために必要なこと

vol.25在日スイス大使館
スイス外国企業誘致局長

松田 俊宏さん

2020.03.03

国内スタートアップの海外進出を支援するX-HUB TOKYOは11月29日、研究開発やイノベーション環境創出の取り組みの中心となる方々をお招きして講演を開催した。常にイノベーションが進んでいる国ランキングにおいて世界のトップランクに位置するスイス。その取り組みについて事例をまじえてお話し頂いた。


スイス・研究開発拠点設立のメリットとは

〈講演者〉
在日スイス大使館 スイス外国企業誘致局長
松田俊宏氏

まずは簡単にスイスの概要とオープンイノベーションについてお話します。スイスの面積は九州と同じくらい、ヨーロッパの中でも小さい国のひとつです。人口833万人のうち25%を外国人が占めており彼らの多くは起業家や経営者、研究者が多いのが特徴です。例えばスイスの有名な会社ネスレは、ドイツ人のアンリ・ネスレが創業した会社で、多くの外国人が様々な分野で活躍しています。
EUに属していないため通貨はスイスフランを使っており、非常に強く安定しています。言語はスイス語というのはなく、ドイツ語・フランス語・イタリア語と地域によって違う言語を使いますが共通言語は英語です。ビジネスの場合は、ほぼ英語を使うので日本人にもビジネスがしやすいです。

 

GDPは、安定的に少しずつ伸びています。特徴として1人当たりのGDPが日本の2倍近くあり、非常に生産性の高い国ということが言えます。失業率は約4%と低くヨーロッパの中では優等生です。インフレ率も低く物価も安定していることなどが、スイスを拠点に選んだ方々の理由として挙げられます。

 

日本からのアクセスは成田空港から毎日1便あり、関空からも直通便が就航する予定です。ヨーロッパの主要キャリアをはじめ中東やアジアの航空会社も、チューリッヒやジュネーブに就航しています。また、特急や高速道路は国内だけではなくドイツやフランスにも直接つながっているので、一度スイスへ入国するとヨーロッパや中東、アフリカなどへのアクセスも便利です。

 

スイスは様々な統計で生産性や教育システムにおいて非常に高い順位に挙げられていまが、競争力の高い人材が多いというのがその理由のひとつです。スイスは物価が高いのですが、人件費が高いことが理由として挙げられます。世界中から経験豊富で優秀な人材が高い給料をもとめて集まってくるのですが、外国語能力が高い方が多く、平均2〜4言語を話すことができます。

 

スイスは永世中立国として戦争はしないと宣言をした国なので、政治的にも経済的にも安定しています。EUやヨーロッパ各国とシェンゲン協定を結んでいて、シェンゲン圏に入るとパスポートコントロールがなく他国へ移動でき、日本とは自由貿易協定(FTA)を結んでいて様々なメリットがあるため、日本にあるスイス企業は約150社、スイスにある日本企業も約150社と多くの方々がスイスを拠点に活動しています。

 

フランスやドイツなどと比較して採用と解雇の柔軟性が高いのも特徴のひとつです。両国は労働組合が非常に強いため、従業員を雇うと会社理由で解雇ができませんが、スイスの場合は、3カ月から6カ月ほど前に通知をすれば比較的簡単に解雇をすることができます。


スイスのオープンイノベーションの
プラットフォーム

イノベーションの主要な舞台は、大学や研究機関です。スイスの国立大学は、連邦工科大学チューリッヒ校、連邦工科大学ローザンヌ校の2校のみ。世界の大学ランキングでは、チューリッヒ校が11位、ローザンヌ校は35位で、ヨーロッパの中でもトップクラスです。この2つの国立連邦大学で基礎研究を行い、その後州立大学と共に製品化の研究を行うというのがスイスのイノベーションの大きな傾向です。

 

昨今、ヨーロッパのトップレベル研究機関がスイスに集まってきていて有名な研究が次々と出てきています。研究機関で最も有名なのはヒッグス粒子を発見したCERN(セルン)です。

 

2016年からスイス国内5カ所に、オープンイノベーションのプラットフォームとなるスイッツランドイノベーションパークを設ける計画が発表されました。その5カ所とは、チューリッヒ・ウエストスイッツランド・ローザンヌ・イノブ・アーレ・バーゼルです。バーゼルは製薬・ケミカルの中心地であり、チューリッヒは、IoT・ロボット技術・ドローン・AI・5Gなどの研究が、チューリッヒ工科大学を中心に行われており、その土地の大学と一緒になって共同研究を行う舞台にスイッツランドイノベーションパークがなっています。ジュネーブはバイオ関係の中心地であり、シオンではスマートエネルギー、ウエストスイッツランドでは、スマートファクトリーやIoTや電池の研究の集積地になる予定です。実際に世界的にも有名な企業がスイスを舞台に活動していて、日本の名だたる医療系企業や機械系企業、製薬系企業の企業がスイスを舞台に活動しています。


スイス外国企業誘致局のご紹介

最後に簡単に私どものストラクチャーをご紹介します。外国企業誘致局のおおもとがスイス経済省、つまり日本でいう経済産業省の下にあります。スイス・グローバル・エンタープライズという機関がチューリッヒにあり、それが私どもの本部です。スイス外国企業誘致局というのは日本の出先機関で、スイス大使館の中に事務所があります。スイスは州によって、法人税制やビジネスの許認可の取得方法が違います。そのため企業設立やビジネス活動をしていく上で州政府との連携が非常に重要です。そこで我々が州政府と連携しながら、日本企業のスイス進出をサポートしています。会社設立の他に日本の会社のオープンイノベーション、スイスの大学、スタートアップ、大企業などとのオープンイノベーションのサポートもしていますので、ご興味のある方はご連絡ください。

本日はどうもありがとうございました。


ディープラーニングを活用した
プレディクティブ・メンテナンス(予知保全)と
製造分野での応用

〈講演者〉
スイス研究開発センター(Swiss Center for Electronics and Microtechnology, CSEM)
ロボティクス&機械学習事業部長
フィリップ・シュミート氏

フィリップ・シュミート氏の所属するCSEMは、スイスにおける研究機関で産業のためのアルゴリズム技術の開発やスタートアップの立ち上げ、クライアントから委託された研究開発、技術ライセンスの提供を行っています。講演では、CSEMの歴史と現状や現在取り組んでいるディープラーニングの研究と列車に関する事例をご紹介頂いた。


SWITZERLAND INNOVATIONの
取り組みについて

〈講演者〉
一般社団法人Japan Innovation Park (JIP) 代表
小山勇氏

一般社団法人Japan Innovation Parkは、日本とスイスのイノベーションの交流促進をしていくため2019年9月に設立されました。日本企業がスイスに進出するだけではなく、スイス企業が日本への進出し日本をベースにアジア展開ができるような関係構築をしていき、イノベーションで両国にメリットのある交流を促進する活動をしています。講演ではスイスをベースに欧州展開している企業事例や活動詳細などをご紹介頂いた。