【 インタビュー 】
発達障害、メンタル問題に悩むすべての人をサポートする
ー米国発HoloAshが語る、海外展開を見据える際に意識したいポイントー

vol.30HoloAsh最高経営責任者

岸 慶紀さん

2020.03.31

X-HUBは、都内のスタートアップ、ベンチャー企業がグローバルにビジネスを展開していくための環境を整備し、幅広く国内外の投資家、大企業等とのビジネスマッチング等の機会を提供する事業です。
今期は、都内のスタートアップ、ベンチャー企業がグローバルに成長していくための支援として、海外の大企業とのビジネスマッチングプログラムを実施しています。 またプラットフォーム形成の一環として、海外市場の予備知識等を得ることを目的としたイベントも実施しています。
ビジネスマッチングでは本年度採択企業が海外企業とのNDA締結等に至る件数は90社超、イベントにはオンラインも含む参加者が総計4,000名以上となっています。
今回は、前年度に採択された「Holoash」に海外展開を目指すきっかけや現状、X-HUBでの支援内容等についてインタビューを行いました。



発達障害、メンタル問題に悩む人々をサポートするスマートフォン向けアプリ「Ashley(アシュリー)」を展開するHoloAsh(ホロアッシュ)。米国で産声をあげたサービスは、多くの現代人の悩みを解決すべく、世界を舞台に大きく羽ばたこうとしている。


HoloAshは2018年に創業されています。主な事業内容をお聞かせください。
注意欠如多動性障害(ADHD)など発達障害やメンタル問題、孤独に悩む人々のメンタルケアをサポートするサービスを提供しています。スマートフォン向けアプリのAshley(アシュリー)は、人工知能(AI)と会話ができるサービスです。画面上に表示される3種類のキャラクターから好みのものを選び、いつでも好きな時に音声チャットまたはテキストで会話ができます。例えば「イベントの登壇前で緊張してきた。どうしよう」と声を送ると「大丈夫だよ」と、キャラクターが励ましの言葉を返してくれたり、落ち着くための音楽コンテンツを送ってくれたりするのです。米国で2019年10月にサービスを開始し、ユーザー数は4ヶ月間で5000人を突破しました。

このサービスは自分自身が小さい頃からADHDに悩み、社会で感じてきた生きにくさを解決したいとの想いから生まれました。不安を感じているユーザーを少しでもポジティブな気持ちに誘導し、自己肯定感の向上につなげることができたら嬉しいです。

事業展開の場としてなぜ米国を選ばれたのでしょうか?
私たちが日常で使う言語を「自然言語」と呼びますが、人工知能(AI)が自然言語を処理する際、日本語よりも英語の方が適していたことが主な理由です。AIから的外れな回答がきてしまうと、安心感を得たいユーザーにとっては逆効果になってしまいます。また市場規模も米国の方が大きいと判断しました。

ユーザーを細かく分析していくと、都会に住む20代の男性の利用が多い傾向が見えてきました。「米国の男性は強くてたくましい」というイメージに悩んでいる方が多く、カウンセリングに行っても、行ったことを口外したくない人が多いと想定しています。現在アプリは無料で使うことができますが、今後のプレミアムサービスも検討しています。スマートフォンの普及やメッセンジャーアプリの登場で、発達障害と診断されていなくても、注意散漫な行動や「演じる事に疲れた人」は多いのではないでしょうか。だからこそ米国では、「ここだけは自分らしく居られる場所」として使われています。

米国創業の会社である一方で、なぜX-HUBの米国西海岸進出支援コースに参加されたのでしょうか?
立ち上げたばかりのスタートアップとして、周囲からの信頼度を高めたいというのが一番の目的でした。支援コースに参加させていただいたのは2018年6月と、まだ会社を立ち上げたばかりの頃。東京都が主催するプログラムに参加できたら、会社としての信頼度が上がるのではないかと考えて挑戦しました。特に米国では、「誰からの紹介」「誰がサポートしてるか」は大事です。X-HUBでは、シリコンバレーの「中心人物」がメンターをされていて、投資家やVC(ベンチャーキャピタル)を紹介してくれました。海外の展示会に出展することがゴールというようなプログラムが日本には多い中、X-HUBのプログラムを通じて支援期間が終わった後にも続く人脈を形成することができたように思います。

米国で事業を展開されるなかで感じている難しさを教えてください。
サンフランシスコが本社なのですが、人件費の高さには驚きました。米国は州ごとに法律が異なり、サービス拡充に伴ってそれらに対応するために弁護士に依頼する費用も発生します。実は、ここもX-HUBからお会いした弁護士にお願いができました。

米国ではスタートアップや投資家のコミュニティーに参加するのが難しいとも言われています。投資家が出入りしているグループに参加しようとしても、メールや電話を通じて初見でアポイントを取れることはほとんどありません。そういった時に重要になってくるのが、知人の紹介です。コミュニティーに精通している人が仲介してくれることで、話がぐっと進む場合が多いと思います。そういう意味でもX-HUBに参加したメリットは大きかったですね。

これから海外展開を目指す企業にアドバイスをお願いいたします。
大きくわけて2つあります。まずはユーザーインサイトも、日本でできることを着実に積み上げること。例えばワインを売りたいとして、cheap wineとinexpensive wineのふたつの単語が相手に伝える印象は大きく異なります。SNSなどを使いユーザーが使っている言語に触れて隠れた心理やニーズを知っていくのがおすすめです。

海外で展開しようと考えているサービスや商品が、現地のニーズに適しているかどうかの見極めも大切でしょう。日本人をターゲットにした商品をそのまま海外に輸出しても、成功するかどうかはわかりません。日本は市場も独特ですし、それぞれの国の課題は異なります。そのため戦う場を慎重に選んでいく必要があると思います。

今後の展望をお聞かせください。
会社としてはもちろん、私自身としても「多様性が生きる社会システムを創る」という目標を掲げています。ありのままの自分が出しづらくなってしまっている世の中だからこそ、自分自身を否定せず、自分らしくいられる環境をつくっていきたい。そのためにはまず、現状のサービスをしっかりと育てていきます。現在アプリを通じて40万件ほどの会話が行われていますが、今年中に250万件を目指しています。音声とテキストのSmall TalkのデータはまだGAFAさえ手をつけられてない、大きな可能性を秘めていると考えています。

社名の「HoloAsh」は北欧神話から着想を得ました。神話の中に登場し、様々な生物が寄り添い合う木の名前を社名につけています。多様な人と寄り添いながらも自分らしくいられるような社会の実現に向けて、これからも一歩づつ進んでいきたいと思います。