【 インタビュー 】テクノロジーはグローバルに通用するーエルピクセルが考える海外展開への布石ー | 【東京都主催】海外進出支援プラットフォーム「X-HUB TOKYO」

【 インタビュー 】
テクノロジーはグローバルに通用する
ーエルピクセルが考える海外展開への布石ー

vol.31エルピクセル代表取締役

島原 佑基さん

2020.03.31

X-HUBは、都内のスタートアップ、ベンチャー企業がグローバルにビジネスを展開していくための環境を整備し、幅広く国内外の投資家、大企業等とのビジネスマッチング等の機会を提供する事業です。
今期は、都内のスタートアップ、ベンチャー企業がグローバルに成長していくための支援として、海外の大企業とのビジネスマッチングプログラムを実施しています。 またプラットフォーム形成の一環として、海外市場の予備知識等を得ることを目的としたイベントも実施しています。
ビジネスマッチングでは本年度採択企業が海外企業とのNDA締結等に至る件数は90社超、イベントにはオンラインも含む参加者が総計4,000名以上となっています。
今回は、前年度、本年度に採択された「エルピクセル」に海外展開を目指すきっかけや現状、X-HUBでの支援内容等についてインタビューを行いました。



医療画像の診断を支援するシステムを展開するエルピクセル。テクノロジーはグローバルに通用するという信条のもと、ライフサイエンスと画像処理や解析技術を融合し、医療の現場と研究の世界を大きく変えていく。


エルピクセルは2014年に創業されています。主な事業内容をお聞かせください。
医療画像の診断を支援するサービスを展開しています。弊社が開発しているのは、顕微鏡の病理診断の画像やコンピューター断層撮影(CT)画像、乳がん検診のマンモグラフィーといった画像データを人工知能(AI)が分析するソフトウエアです。例えば磁気共鳴画像装置(MRI)画像を使って医師が患者の脳を診察する場合、200枚近くある画像を組み合わせながら、立体的な構造をイメージして異常を発見しなくてはいけません。最終的な診断結果は医師が決めますが、弊社のソフトウエアを活用することで、大量の画像を調べる際の負荷を軽減したり見逃しを防いだりといった効果が見込めます。
私は21世紀はライフサイエンスと情報技術(IT)の時代だと考えています。iPS細胞に代表される再生医療や遺伝子の治療技術に注目が集まっているように、日常生活においてライフサイエンスの重要性は高まりつつあります。私たちのミッションは日々蓄積される医療データとITやAIの力を掛け合わせることで、これまでの医療や研究のあり方を変えていくことです。

医療現場からは御社のサービスに対してどのような反応がありましたか?
「一度使うと手放せない」というお言葉を頂戴した時は、とても嬉しかったですね。実用化に向けて大学や研究機関などと30以上の共同研究を行ってきましたので、今後も少しづつ導入の事例を増やしていきたいと思います。日々ニュースでも取り上げられているように、医療業界にはまだまだ様々な課題があります。医師の不足や長時間労働のほか、医療現場での誤診などがその一例です。医師が限られた時間で大量の画像を診断すると、異変を見逃してしまうリスクもあります。だからこそ不安を抱えながら診断をしている現場の人々が、少しでも快適に診断ができるようサポートできたら嬉しいですね。
一方で課題として捉えているのが、AIの調整です。疾患のある患者のうち正しく陽性と判断できた人の割合を示す「感度」を調整する必要があります。利用者側の期待値コントロールも必要ですし、各国の診断基準によっても変わるので、そのバランスが重要です。いずれにしても、現在はAIの感度を上げるために画像の質を追求し、多くの病変の画像を覚えこませているところです。

X-HUBが展開する米ボストン・サイエンティフィック社とのマッチングプログラムに参加されたきっかけを教えてください。
海外展開を見据えるなかで、現地での販売やマーケット開拓や協業をできるパートナーを探していました。シンガポールにアジア太平洋統括拠点を置く医療機器大手のボストン・サイエンティフィック社は、東南アジアを中心に世界中にネットワークをもっています。今回参加させていただいた2019年10月からの約2ヶ月間のプログラムでは、英語でのピッチや商談のトレーニングなどを通じて、海外展開に向けて必要な知識を習得することができました。また海外メーカーとの共同開発や、販売代理店の開拓といった可能性を探ることができた点においても有益だったと感じています。

2018年にはX-HUBのドイツ(ベルリン・ミュンヘン)進出支援コースにも参加されています。
テクノロジーは世界中で通用すると考えているので、私たちは創業当初から海外展開を視野に入れ、様々な情報に対してアンテナをはっていました。歴史を遡ると日本はドイツから医療を学んでいますし、生物学に対しての深い敬意もある。拠点をドイツにおいているグローバルな医療メーカーも多いですね。そういった背景から、ドイツ進出支援コースに参加させていただきました。
プログラムに参加してすぐに何かが形になったというわけではありませんが、現地の様々なニーズや協力パートナーの探索を進めることができました。今後もビジネスマッチングの機会や海外展開のプログラムがあれば、積極的に挑戦していきたいです。

これから海外展開を考えている企業にアドバイスをお願いいたします。
そもそもなぜ日本でビジネスをするのか、なぜ海外に進出したいのかというビジョンを明確にすることが重要です。日本では自国内にある程度の規模のマーケットが既にありますし、ただ漠然と「米国に進出したい」と考えているだけでは解決できない課題も多くあると思います。自分たちが挑戦したいビジネスの舞台をどこに設定するのか。ビジョンをしっかりと定めることで、その次の具体的な行動が見えてくるのではないでしょうか。
またサービスのローカライズも大事な鍵になるでしょう。例えば医療分野の例を挙げますと、米国でがんと診断されなくても、日本でがんと診断される場合があります。国ごとに病気の基準や治療方法、そして法律が少しづつ異なるためです。医療は国の法律と深く結びついているため社会性が強く、何か新しいことを始めたり、これまでの慣習を変えたりしようとしても時間がかかるのが現状です。一企業だけでコントロールできないことも多々あります。おそらく今後も海外展開に向けて様々な課題が出てくると想定していますが、リスクをとってでも使命感をもってやりきりたいという想いを胸に、革新的な発見や発明を通じて世界をより良くしていきたいと思います。