X-HUBは、都内のスタートアップ、ベンチャー企業がグローバルにビジネスを展開していくための環境を整備し、幅広く国内外の投資家、大企業等とのビジネスマッチング等の機会を提供する事業です。
今期は、都内のスタートアップ、ベンチャー企業がグローバルに成長していくための支援として、海外の大企業とのビジネスマッチングプログラムを実施しています。 またプラットフォーム形成の一環として、海外市場の予備知識等を得ることを目的としたイベントも実施しています。
ビジネスマッチングでは本年度採択企業が海外企業とのNDA締結等に至る件数は90社超、イベントにはオンラインも含む参加者が総計4,000名以上となっています。
今回は、本年度のBatch 1 モビリティ プログラムに採択された「ナイトレイ」に海外展開を目指すきっかけや現状、X-HUBでの支援内容等についてインタビューを行いました。



位置情報のデータ解析サービスを手がけるナイトレイ。訪日外国人の動向分析や次世代型移動サービスMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)の取り組み支援など、時代のニーズにあわせて、活躍の場を次々と広げていく。


ナイトレイは2011年に創業されています。主な事業内容をお聞かせください。
ロケーションビッグデータと呼ばれる、位置情報に関する大量のデータを解析するサービスを展開しています。世界中の施設や場所にまつわる最新のデータを収集、解析、そしてデータベース化することで、今まで見えていなかった情報をWebサービスやレポーティングサービス等のわかりやすい形で提供し、様々な業種の企業や地方自治体にご活用いただいています。無料プランを含めると、利用顧客は1万社を突破しました。
主要なサービスのひとつである訪日外国人の動向分析サービス「inbound insight(インバウンドインサイト)」では、交流サイト(SNS)上に一般公開されているつぶやきや写真から国籍や訪問施設までをリアルタイムで収集解析・データベース化した結果を提供することからスタートし、現在では旅行の移動傾向解析や旅行消費解析にも対応しています。観光領域に限らず、国内各地の企業や地方自治体の現場において、データに基づいたマーケティング施策立案や効果検証のニーズは高まっており、今後もデータを用いた地域活性化支援ソリューションとして様々な顧客の課題解決を支援していきたいと思います。

2017年にはトヨタ自動車との業務提携が大きな話題になりました。
CASEやMaaSをテーマとしたトヨタ自動車のオープンイノベーションプログラムを通じて、自動車の利便性の向上や新サービスの共同開発を目的とした協業企業の一社に選定いただきました。コネクティッドカー等の自動車を通じて得られる大量のデータには、現状の社会課題を解決したり、人々の生活をより便利にしたりすることができる大きな価値があると考えています。現状ではコネクティッドカーデータが事故多発地点や災害時の道路状況の分析で活用はされていますが、今後は車種ごとの移動実態や利用者のライフスタイルなども分析することで、利便性の高い新サービスやモビリティーサービスの開発だけでなく、ビッグデータ活用による地域活性化支援などの新たな可能性もみえてくるでしょう。
また、国内ではご存知の通り、多くの地域が少子高齢化や人口減少といった課題を抱えています。地方公共交通の衰退や自動車運転免許証の返納により、特に地方では高齢者や子供といった交通弱者が増えているのも事実です。そういった地域では利用者の予約に合わせて運行経路を決める「オンデマンドバス」などの新たなMaaSサービスの導入が進められており、最適なサービスを模索するためにビッグデータから生活者や旅行者の移動や滞在ニーズを解析することが求められており、今後も様々な分野で多様な位置情報データやその解析技術が求められると考えています。

X-HUBのBMWドイツ本社とのマッチングプログラムに参加されたきっかけを教えてください。
今すぐ海外展開を考えていたわけではありませんでしたが、普段からお世話になっていた関係者の方の後押しで2019年の8月にプログラムに参加しました。専任の担当者によるメンタリングや面談など手厚いサポートのほか、英語のプレゼンテーションに向けた英語学習の機会が提供されるなど、充実した内容だったと思います。自社のサービスを説明する英語の資料が出来上がった時はとても嬉しかったですね。今回のプログラムを通じて、海外展開に対するハードルが少し下がったことも収穫のひとつでした。これからは海外企業との協業提案を見据えた事業展開や研究開発も行っていきたいと思います。

現在は海外の情報をどのように収集されていますか?
様々な方法がありますが、自分が設定したキーワードが含まれる最新記事をタイムリーにメールで教えてくれる「googleアラート」はよく使っています。私達がフォーカスしている位置情報ビッグデータ解析に関する海外動向や新サービスをウォッチするために、「Location Intelligence(ロケーションインテリジェンス)」などの日本ではまだあまり浸透していないようなキーワードも意図的に設定しています。ビジネスや研究のテーマによっては、国内よりも海外の方が一歩先に進んでいる場合もあります。そういった意味でも国内の情報源だけに頼らず、海外で発信されている情報にも目をむけておくことを重要だと思います。

海外展開を目指す企業へのアドバイスをお願いいたします。
BMWドイツ本社とのマッチングプログラムを振り返ってみると、2つのポイントが重要だったと考えています。1点目は知財に関しての知識を事前に深めておくこと。BMWとの打ち合わせの際に、会話の冒頭で「特許や知財についてはどのように考えていますか?」という質問をいただいた時はとても驚きました。彼らはグローバル企業だからこそ知財について注意深く意識しているのだと感じました。そういった質問に対してすぐに答えることができると、相手からの信頼度や評価も変わってくるのではないでしょうか。幸いにも弊社は知財戦略として国内外での特許申請や取得をしていたため、スムーズに回答できました。
2点目は自分たちの会社やサービスを説明する際に、国内の企業ではなく、グローバルな企業と比較したポジショニングマップを作成しておくことです。海外の企業と話す際に、どのように自社の立ち位置を伝えるかは大事なポイントだと思います。
デジタル技術の発展やスマートフォンの普及等により、今では地球上のどこで何が起きているかをデータを用いて読み解くことができるようになってきました。様々な分野でこれからますますデータの重要性が高まってくることでしょう。最近では観光・インバウンド領域、MaaS領域だけでなく、まちづくりやスマートシティといったテーマでも位置情報データ活用の事例も増えてきています。今後も位置情報のデータ解析技術を用いた地域活性化支援ソリューションを通じて、新たな取り組みにチャレンジされている顧客やパートナーに貢献していきたいです。